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SOS(士郎side)
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「勝手に部屋漁って、ごめんね。でも、必要なものは入ってるから」
はい、とボストンバックを渡されて、目を白黒させた。
「いったい、何の真似だ?」
「アキラ君からSOSだよ。リューちゃんがヤバイって」
「……っ!?」
ドキンと、胸が嫌な音を立てた。
「怪我でも……したのか……?」
声が渇いて、震えた。
それも、自分がすぐにでも行かなければならないほどの?
「詳しいことはわからない。これ、アキラ君の連絡先。ヘリは用意してもらってる。移動しながら聞けばいいよ」
渡された紙切れを握り締めた。
背中を冷たい汗が流れ落ちる。
二度と会えない……。
そんなこともありえるのだと、覚悟を決めたつもりではあったが、いざとなれば何の役にも立ちはしない。
ただ呆然と立ち尽くすばかりの情けない自分がいた。
不意にパシッと頬を張られた。
「シロちゃん、しっかりして!」
ハッとして、克己を見た。
頭が何とか正常に起動し始める。
途端に絶望的な気分になった。
「……ダメだ。1時間後には煌牙の手術が始まる……」
言葉が感情を上滑りする。
棒読みに近い、ひどく平坦な己の声が、不協和音のような不快さで耳を打つ。
「せめて、すべてが終わってから……いや、それでもここを動けない……」
自分には託された想いがある。
すべてを放り出して駆けつけることなど到底できやしないほどの、重くて尊い、眩しくも儚い想いが……。
とその時、
「行け」
たまたま横でやり取りを聞いていたルイが冷ややかな声で言った。
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