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動物園とマグカップ-2
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「翔星、なんか欲しいものある?」
店内をせわしなくウロウロしている翔星に声をかけた。
「え…?」
「その…俺からのちゃんとしたプレゼントあげたかったんだ。」
「でも……。俺は見てるだけで」
「遠慮するなよ。デート誘ったの俺だし。」
「…デート」
うわ、やめろよその照れくさそうな顔。
こっちまで移るだろうが…。
「うん、まあ、デートだ。だから好きなもの買って!」
「ん…じゃあね、こっち……」
服の裾をくいくいと引っ張って案内してくれる。
は、なんだこれ。
可愛すぎるだろ。
そういう行動ひとつひとつがお前を絆したくなるって分かってる?
まあ分かってないんだろうな。
本当に無意識はこわい。
「これ…欲しい、かも。」
売り場の隅っこまで来て遠慮がちに翔星が指さした物は
うさぎとかクマとかパンダとか、
可愛い絵柄ではおなじみの動物たちがプリントされているマグカップ。
「これ?」
「ん。それ。」
「よし、いいよ。他に欲しいものない?」
「あ、もういっこおんなじの取って…!」
「ん?これと同じマグカップ?」
「うん…。あ、もういっこは俺がお金出すから…。」
んんん、どういうことだ?
「あー、兄弟用とか?それなら俺出すよ。」
「あ……そじゃなくて、」
「いいよ、なんでも言ってみな。ゆっくりでいいから。」
翔星の頭に手をおいて髪を撫でる。
「おそろい、欲しい。陽斗さんとの……だから、もういっこは俺が買いたい…。」
「…お揃い?」
「あ、や、嫌だったらいいや…その――、わ!!」
衝動で翔星の頭をかき抱いて胸に引き寄せてしまった。
「お揃い、欲しい…。」
周りから視線が突き刺さっているような気がしたけれど全く気にならない。
「ちょ、陽斗さん…っ!恥ずかし。」
俺も恥ずかしいわ。
お揃いが欲しい、なんて今まで生きてきて言ったことがない。
今まではお揃いとかくだらねーって思ってたけれど。
第一、絵柄がまったく同じなわけで。
それをお互いに買って交換したって自分で自分に買ったようなもんだけど。
でも、なんかな。
翔星とのお揃いはわけが違う気がするんだ。
「よし、買いに行くか。俺と翔星のお揃いのマグカップ。」
「やった!嬉しいっ!!」
「うん、俺も。」
こうして俺たちは同じマグカップを手にしてレジに並んだのだった。
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