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…どれだけの間、ここにいたらわからない。
「ぐすっ……はぁ………」
多分、今の俺の顔は目が腫れ、充血していて、みれたもんじゃないだろう。
寮の中庭に座り込んで、上を向く。
段々と薄暗くなっていく空は俺の心を映し出しているようで…
……イタい。
自嘲気味に笑う。
人のいない中庭には、俺の笑い声だけが響いた。
………今頃、近藤と亜希は恋人同士、なの、かな…
嫌だ。
近藤と、他の男が一緒にいるなんて。
そんなこと、考えるのすら嫌だ。
段々と暖かくなってきたと言っても、春の夜は、まだまだ冷える。
…だけれど、なんとなく、部屋に戻るのも、阻まれる。
だって…あそこでは……
薄暗い空に、宵の明星が、輝いている。
どうして、こうなんだろう。
なんで、中学の時、あんな事を言ってしまったのだろう。
頬を真っ赤にして、寒い中俺が来るのをずっと待っていてくれて、精一杯の、愛の告白をしてくれたのに。
僕は、1番言ってはいけないことを言って、彼を傷つけた。
「しつこいのは、嫌いだよ」
そう言って、彼を傷つけた。
言葉は、一度唇から滑り出たら、取り消すことは出来ない…のに。
嫌いなやつなら未だしも、近藤には、絶対に、言ってはいけないことだった。
その言葉を聞いた瞬間、彼は笑って
「そっか。そうだよね。急にごめんね。気持ち悪かったよね。」
と言っていた。その時の俺は、きっと気づいていなかった。彼が泣きそうな、苦しい顔をしていたこと。
彼がいなくなったのを知って、目の前が暗くなった。…心臓が止まってしまった気がした。
今更後悔しても、もう遅い。
そんなことはわかっているけれど、涙が溢れて止まらなかった。
なんて自分勝手なのだろう。
いつか謝ろうと、いつかその想いに応えたいと、思っていた。
だけど、近藤がいないと、意味がない。
…俺は、近藤の行った先も、新しい住所も、何も知らなかった。
だから!俺がルームメイトの名前を見た時、死んでしまうかと思うくらいに心臓が脈打った。同んなじ名前の違う人かもしれなかったけれど。
きちんと謝って、彼に気持ちを伝えられたら……
そう思ったけど、結局は、近藤が部屋に来た時に、男と自分がキスしていたことでうやむやになった。
俺は、なんてバカなんだろう。
自分に、愛される資格がないのなんてわかってる。わかっているのに、本当は、まだ俺のことが好きなんじゃないか、とか、思っていた。自惚れていた。
バカだ。バカにもほどがある。
…それにしても。亜希が、近藤のこと好きだったなんて、知らなかった。
取られてしまう、なんて、そんな可能性考えたこともなかった。
……もう。やだ。
近藤…裕貴…ひろたか。
「ひろ…たか」
思わず声に出していた名前。ふと目の前に影を感じ、顔を上げると。
…そこには、息を切らした、近藤の姿があった。
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