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夢想
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亜希くんと話をした後、僕は高木を探しに行った。走って。走って。…校内を。
だけど、全然見つからなくて。
焦る気持ちを抑えて、また、走って。
…そういえば、中庭はまだ見てなかった。
そう思って、中庭の方へ、また走る。
そこに、高木がいるとは思えなかったけど、万が一、いたとしたら。春の夜はまだ寒い。
中庭の扉を開け、外に出る。
…やっぱり、寒いよぉ…僕、寒いのって苦手…
初めて、あの寮の部屋に入った時。
高木が知らない男とキスしていた時、正直、僕は、僕の恋人でもないのに、高木に、怒りと嫉妬の念を抱いてしまった。
その時くらいだ。僕がまだ、高木が好きだと気づいたのは。
高木に振られてから、ずっともやもやしていたのに、冷静に、すとん、と胸の中に落ちてきて、落ちついた。
ああ、僕は高木のことが、好きなんだと。彼じゃないといけないんだ、と。
悲しいことに、彼にはもう、想い人が、いたみたいだけど。
それでも、不意打ちにしたとしても、亜希とキスした時、確かに彼は、苦しそうな顔をした。自惚れる。彼は、高木は、僕の事が、好きになったんじゃ、ないか、と。
「ひろ…たか」
声が、聞こえた。
目の前に、高木が、いた。
多分、僕は驚いた顔を、していると思う。彼も、驚いた顔を、している。
しゃがみこんで、高木に目線を合わせる。
無意識に、右手を、高木の頬に、添えていた。
ねぇ。どうして今、僕の名前呼んだの。
僕のこと考えて、くれてたの。
高木にとって、僕ってどのポジションにいるの。知り合い?友達?…それとも…
「…お前は、どうなんだよ」
…あれ。声に出てましたか。
「…丸聞こえだし。馬鹿なんじゃないの」
……そうかも。
「…で、お前はどうなの」
…何が?
「…っだから!お前にとって、俺って、どの、ポジション、なの、かな?…って」
ふふ…おかしいこと、聞くね。
「はあっ!?お前ふざけるなよ。俺が…俺が、どれだけお前の事かんが……」
はっ、とした顔をして口を隠す高木。…全部、聞こえちゃってるよ。あとの言葉も、予想出来すぎる…
「……なんだよ」
…なんでも、ないよ
くすくすと笑いながら言うと…そっぽを向いてしまった。…怒っちゃった?
「あーもー、いいから言えよぉ!」
えぇ?だって僕は一回言ってるもの。
「はあ?いつだよ聞いてないし」
…ホントに?僕が転校する前に、言ったの、忘れちゃった…?
「忘れて、ない」
よし。じゃあ、今、高木がどう思ってるか、教えてよ。高木にとって、僕って、どのポジション?
「………」
黙ったままの高木。
心なしか、顔が赤い。
ほら、言わないとわかんないよ?
頬に当てたままだった右手を、するりと撫でた。滑らかな手触りで、気持ちがいい。
高木は、一瞬ビクリとした後、ふるふると身体を震わせている。
…可愛いな
顔をみると、唇が、僅かに動いた。
そして小さな声で
「………な人」
と呟いた。
え?何?聞こえない
「す…きな…ひと」
今度は聞こえた。だけどもう一回、ちゃんと、聞きたくて。
ごめん。もう一回
「くそ…なんで聞こえてないんだよ馬鹿!次で終わりだからな!もう言わないから!好きだってさっきから言ってんじゃん!なんだよ、お前なんか、亜希とらぶらぶしてればいいじゃん!俺なんかに構わなくても、亜希、待ってんじゃねぇの!?」
あら…怒っちゃった
怒ったついでに、余計なこと言ったの、気づいてるの。
…嫉妬、しちゃった?
「っ……ばかやろっ!誰がお前なんかに……うぐっ!!」
あ。ごめん。強く抱きつきすぎた。許して。
ああ。まるで夢のよう。…起きたら布団の中でした。とかいうオチはやめてよ。
少しの間、離れようともがいていた身体は、やがて抵抗するのをやめて、僕の…背中に、手を、伸ばしてきた。
僕も、好き、だよ。
そう言うと、涙が、ぽろぽろと僕の着ている服に、落ちてくるのが分かった。
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