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夏休みと小旅行①
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(葵語り)
長い夏休みが始まった。
午前中は補講、午後は部活で、まるっと1日中、学校に居ることになる。
ただでさえ暑くてだるいのに、勉強なんかやってられない。
セミの声と、窓から見える青空。
夏の空は低くて色が濃い。
午前中の補講から寝てしまいそうだ。
熊谷先生とは廊下ですれ違った時、何度か話をした。
にやにやしながら、
「高校生らしくていいね。勉強と部活の両立。」
と言われ、ムカッとした。
意外なことに、サッカー部の山本先輩も補講を受けていた。
大会が終わったので、部活は引退している。
先輩に聞いたら、俺は理系だからちょっとくらいならいいんだって、モゴモゴ言ってた。
ってか受験生がよくないだろ。
「あのさ、伊藤ちょっと聞いてもいい?」
補講が終わって、片付けをしていたら山本先輩に話しかけられた。
「なんですか?」
山本先輩は、俺の前の席に座り、くるりとこっちを向いて話し出した。
「お前さ、男同士とかの恋愛ってどう思う?」
「なっ……んで、それを俺に……」
聞いてくる?もしかしてバレた?何かしたか。
「この前、首にキスマーク付けてたろ?
お前の雰囲気からして年上だろうなぁって思って。
だけど、あんま幸せそうに見えないし、年上の女がいる伊藤なら、色んな意見が聞けるかと。」
この人、めちゃくちゃ鋭い。
女以外全部当たっている。
あまり幸せじゃないのも…悔しいけど当たってる。
「別に恋愛は本人同士がよければいいと思いますけど。」
「そうだよな。俺さ、この間見ちゃったんだよね。裏庭で男同士が抱き合ってるの。
1人しか顔見えなかったんだけど、たしか2年の島田ってやつ。
お前のクラスじゃない?」
「島田?下の名前分かります?」
「うーんとなーー、島田なんだっけなーわからん。」
島田……わかんないや。同じクラスにそんな奴が居たんだ。
後で熊谷先生に聞いてみよう。
あの人はそういうセンサーに敏感だから知ってそう。
「伊藤、年上の女ってどうなの?やっぱ同世代よりいいの?」
「えっ、まあ、同級生とかよりは、落ち着いていいですよね。」
あんまり聞かないでほしい。女知らないし。
偉そうに言える立場でもない。
「いいなーー。俺も年上の彼女ほしいなー。」
「先輩はよりどりみどりじゃないですか。モテモテだし。」
「そんなんじゃなくて、唯一の俺だけを愛してくれる人が欲しいの。」
唯一の自分だけを愛してくれる人。
俺も欲しいです。
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