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さようなら、こんにちは⑤
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(葵語り)
猪俣先生は、悲しそうに笑った。
「葵が選んだことなら、分かったよ。終わりにしよう。」
柔らかなオレンジ色の日差しが窓から入ってきて俺たち2人を照らした。
「いいの?」
すんなり了承されたことに驚いて、思わず聞いていた。
「いいとか悪いとか言う権利は俺にはない。この関係は、葵が終わりにしたいと言ったら止めにしようと思っていたから。」
優しく話す猪俣先生に、泣きそうになったけど泣かない。ここで泣いたら、自分の決意に負けてしまう。
猪俣先生とまだ居たいと思ってる自分がいる。もう願っても戻れないところまで来てしまってるんだ。
最後に、言いたいことがある。
「先生……今までありがとう。」
俺を好きでいてくれてありがとう。
俺に愛しさを教えてくれてありがとう。
俺に愛をくれてありがとう。
大好きだったよ。
あなたを知らなかったら、今の自分は居ないかったから。
「ああ、ありがとう。」
「先生、元気でね。ってもまた会えるよね。」
「………そうだな。」
最後に握手をして別れた。
あんなに好きだったのに別れるときはあっけない。
恋は脆くて儚いんだと思った。
猪俣先生と別れてから、一人階段でぼんやり座っていた。
終わっちゃった。
心にぽっかり穴が空いた感じだ。
今まで俺の心の中を占領していたものが、ごっそり無くなった。
穴はいつか埋まる時がくるのだろうか。
大好きだったな。
そう思ったら涙が出てきた。
「ううぅ……ぐすん……うわーん。」
子供みたいに涙が溢れて止まらなくなった。
最初から子供になれれば楽だったのかもしれない。
俺、頑張ったな。偉いな。
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