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さようなら、こんにちは⑥
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(葵語り)
「うわーん、ぐずっ…ずびずび。」
しばらく1人で泣いていた。
泣くとスッキリするっていうのは本当だ。
人間は泣くことでストレスを解消できるそうだ。確かにスッキリしたけど、疲れた。
この数日間、考えすぎて精神は限界だった。
あっけなく終わった恋に悲しくなる。
自分から終わらせたくせに変な感覚だ。
俺は階段下で膝を抱えてうずくまった。
廊下は固くヒンヤリしている。
そして、すごく静かだ。
「あーおーいー、何してるの?」
えっ?
階段に聞き慣れた声が響く。
振り返ると熊谷先生がいた。
階段の踊り場に立っていて、下にいる俺からは逆光で眩しくてよく見えない。
「葵、どうした?」
熊谷先生は降りてきて、俺の隣に座った。
ヤバい、こんな時に優しくされると涙腺が緩くなってしまうのは人間の性だ。
「……な…にも…えぐっ、ひっく。」
再び涙が溢れてくる。
また熊谷先生に泣いてる姿を見られた。
しかも号泣バージョンばっかりで恥ずかしい。
「何もなくないよね?泣いてるじゃん。」
そうだよね。
泣いてるのバレバレだよね。
「……いの…また…先生と……」
「うん。」
「……おわ…かれ…して…」
「うん。」
「…あり…がとう…って…」
「うん。」
俺は少しづつ言葉を紡いだ。
熊谷先生は、何も言わず相槌を打ってくれた。そして、頭をよしよしとしてくれた。
「頑張ったな。偉いよ。」
うん。頑張ったよ。
また涙が出てきたので、今度は熊谷先生にしがみついて泣いた。
先生は、あったかいな。
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