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しりとりの続き⑤
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(葵語り)
高速を降りると、道がだんだん山深くなり木々も色づき始めた。
紅葉は、今まであまり注意をして見たことがなかった。
気が付いたら色づいている程度で、見に行くのも初めてだった。
色鮮やかな木々が広がっていて、心を奪われる。
「きれいですね。」
あんまりしゃべるなと言われてから、口を開かないようにしていたのに、思わず口に出た。
「ロープウェイに乗ってここよりもっときれいな所に行くよ。」
ロープウェイって、子供の頃乗ったきりだ。
わくわくするな。
到着して、駐車場で車を降りると、ひんやりした。
空気がしっとりと重い。
「さむっ。」
「山頂まで行くからもっと寒くなる。葵は薄着だな。」
今日は、Tシャツにパーカーしか着ていなかった。
こんなに寒いところに行くと聞いていたら、もっと厚着してきたのに。
「これ貸してあげるから、着てていいよ。」
熊谷先生が、着ていたカーキ色の厚手のカーディガンを貸してくれた。
「これじゃ先生が寒くないですか?」
「いいの、俺はこれを着るから。」
俺がそれを着てもよかったのに、車からガサゴソ探して何か着てた。
借りたカーディガンは、あったかくて、少し大きくて、熊谷先生の匂いがした。
煙草の香りも少しする。
周りは家族連れやカップルばかりで、俺たち男同士は浮いてた。
先生は、彼女と来たことあるのかなと少し気になったけど何も聞けなかった。
ロープウェイに乗ると、そびえ立つ周りの山はすごく綺麗だった。
山頂は寒かった。
紅葉を楽しむというか、真冬に近い寒さで極寒だ。
「山が雪化粧だぞ。葵、見てみろって。すげーな。」
熊谷先生は元気だな。
俺は寒すぎてそれどころじゃない…。
「先生は寒くないですか?」
「俺は寒いの好きだから平気。」
うらやましい思いながら、先生のカーディガンにくるまった。
吐く息が白い。
「しょうがないな。ここに手入れていいぞ。」
ほら、と左のポケットを広げてくれた。
ここに入れろってこと?
俺が見上げると、先生がにっこり笑って小さい声で言った。
「寒いのダメなんだな。ぎゅーってしてあげたいけど、今はポッケだけ。」
ぎゅーって………。
恥ずかしいことを普通に言われるとこっちが照れる。
お言葉に甘えて、ポッケの中で手を繋いだ。
へへっ、ぬくぬく。
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