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熊谷先生の憂鬱8
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(熊谷先生語り)
むしゃくしゃして、家に帰っても落ち着かないので、大学時代の同級生だった野田と飲みに行くことにした。
誘いのメールをしたら、即オッケーの返事が来た。野田も独身だから、こうやってよく飲みに行く。周りはちらほら結婚し始めてるから野田みたいな友人は貴重だ。
「どうした?何か落ち込んでるのか?祐樹らしくもない。生徒に虐められたとか。」
生ビールを2つ注文して、おしぼりで手を拭きながら野田は言った。
すべてを包み隠さず言えたら楽なんだろうが、俺にも話しにくいことはある。
生徒に虐めらた位で落ち込んでたら教師は務まらないだろう。
「まあな。色々あって。ちょっと凹んでる。」
「色々ってなんだよ。別に全部言わなくてもいいからサラッと教えろ。」
ああ。野田のこういう所に救われる。
言ってごらん、的な。
長年の友達は居心地がいい。
生ビールが来たので、乾杯をして一気に喉に流し込んだ。
「付き合ってる子がさ、付き合ったばかりなのにそっけない。会ってもくれないんだけど、それってどうなんだろうか。独りよがりだったのかな。」
一瞬キョトンとした野田は俺の話を聞いて笑い出した。
小さい笑いから、大爆笑になっていった。
「ははは、腹いてぇ。お前が恋愛の悩みを相談するなんて、明日槍が降るんじゃねーの。槍とか鎌とか。会ってくれないって、なんだよそれ。高校生かよ。」
や、槍と鎌……………。
降る訳ないだろうが。
「真剣に悩んでるんだ。笑うな。」
「だって、恋愛なんて面倒くさいって言ってたお前がさ、付き合ってるのに会ってくれないって悩んでるんだぜ。
来るもの拒まず去る者追わずだったお前がだよ?
この驚くべき事実を大学時代の友達全員に一斉メールしたい。みんなに知らせたい。この為だけに、LINEでグループ作ろうかな。」
野田はヒーヒー言いながら笑っている。
笑いすぎだ。
しばらく腹をかかえてる野田を見ていた。
「相手って何歳?年……下だよな。」
「ああ。」
「まさかとは思うけど……。」
「それを聞くな。俺だって初めてだから戸惑ってる。」
俺の表情を読み取って察したらしく、野田は
「まじかーーー。」
店中に響くような大声を出した。
目立ってるし、野田うるせえ。
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