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熊谷先生の憂鬱14
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(熊谷先生語り)
「続きをしなくてもいいの?」
キスの後、煙草を吸いにベランダに出ようとしたら、葵がと聞いてきた。
続き……続き……キスの続き……
いかん、煩悩が邪魔をする。
「キスの続きは、おいおいやっていこう。」
「先生はしたくない?」
丸い素直な瞳が俺を見つめた。
いやいやいやいやいやいや。
したくないとか、そんなこと絶対ないから。
葵はそういう所が鈍い。したくない、イコールやらないではないのだよ。
だが、ここは大人になって答えよう。
「俺はしたいよ。これからずっと一緒に居るんだから、今日勢いでしてしまうより、葵が本当にしたくなった時にしよう。
何度も言うけど、やらなくても一切嫌いにならないから。好きだから。」
一番気にしてたのは、最後の嫌いになられたら……かな。その言葉を聞いた途端、ほっとした表情になった。安堵したようだった。
体を繋げないと相手の気持ちを確認できないと思ってる。それしか知らなかったんだからしょうがないか。まっさらな何も知らない子に教えるには酷な関係だ。
俺は、ずるずると欲望に呑まれるのが嫌だったので、物分かりのいい大人を演じたけど、
男だしこれ以上は我慢できるか分からなかった。
だが、猪俣と同じになるのがもっと耐えられなかった。
ベランダで煙草を吸っていたら、葵も出てきた。
「寒いですね。」
膝を抱えた葵と並んで座る。
「今日は先生と話ができてよかった。色々ごめんなさい。もう隠したりしないから。」
日はとっぷりと暮れていて、夜の静けさが辺りを包んでいる。白い息が夜空に溶けていった。
「このまま葵が話をしてくれなかったらと考えると怖い。話せてよかった。」
「先生、これからもよろしくね。」
照れくさそうに、葵は言った。
「こちらこそ。」
安心したら急に空腹を覚えた。
起きてから何も食べていないことに気付く。いつの間にか二日酔いは治まっていた。
「もう遅いから送ってくよ。ついでにラーメン食べに行こう。」
「わーい、ラーメン!!俺もお腹空いた。」
ラーメンで喜ぶ葵を見ながら、この笑顔を守ってやりたいなと強く感じた。
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