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Act 1 2
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和哉に出会ったのは、人間界に来てすぐの頃だった。
「あのー、」
「……?」
雨の日、
傘なんて知らなかった俺は、公園のすべり台の下で雨宿りしていた。
「傘、持ってねーの?」
「…かさ…?」
「入る?」
俺はびしょびしょになって、寒くて、おまけにお腹が空いていた。
だから、和哉がにかっと白い歯を見せて笑った時、
何の根拠も無かったけど、
こいつにはついていっても大丈夫だと思った。
「ひゃー、急に雨降ってくんだもんな、びっくりしたわ」
「……」
和哉は、初対面の俺にもけらけらとよく喋った。
もちろん、俺が返事を返すことは無かったが。
「なぁ、俺の家、来る?びしょびしょだし、着替えとか持ってないんじゃねーの?」
俺が首をかしげると、和哉は、
「き、が、え」
と言いながら俺のTシャツを引っ張った。
そして自分を指差して、
「俺の家、来いよ」
と言った。
あの日は本当によく雨が降った。
アパートに着く頃には、二人ともずぶ濡れになっていた。
「シャワーすれば…って、もしかしてシャワー分かんない?」
「しゃ……?」
和哉はうーん、と腕組みをした後、「こっち、来て」と俺の腕を引いた。
連れてこられたのは浴室だった。
真っ先に目に飛び込んできたのは 真っ白なバスタブで、最初見たときは、ヒトはなんでこんなものを置いてるんだろうとか思った気がする。
「えーと、これがシャワー。ここひねったら水出てくるから。で、こっちがお湯」
和哉がキュッと取っ手をひねると、長い棒状の物から水が勢いよく出てきた。
「!」
驚いて思わず飛び退いた俺を見て、和哉がふはは、と笑った。
「…水」
「うん、水。マジで初めて触んの?」
頷くと、和哉はへー、と目を丸くした。
何とかシャワーを終えて、キッチンがあるリビングに行くと、なにやら美味しそうな匂いがした。
「…あ、Tシャツ、サイズぴったりじゃん!よかったー」
フライパンを手に和哉が振り返る。
俺は、唯一知っていた言葉を言った。
「あ、り…がとう」
「…………うん」
しばらく黙った後、和哉が呟いた。
「あのさ…俺の家、俺しかいねぇし…泊まってけば?」
「…?」
「泊まるとことか、あんの?」
首を横に振ると、和哉はまた、にっこりと笑った。
「じゃ、決定な。あ、言い忘れてた!俺、和哉。かずやって呼んで」
「かずや」
「うん、かずや。お前は?名前、なんていうの?」
「……シ、ン」
「シンっていうのか、へー」
にこにこと、俺の頭に手を置く。
「よろしくな、シン」
和哉は、
暖かくて、優しい感じがした。
人間が嫌いだった俺は、
その時初めて
人間を好きになったんだ。
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