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Act1 8
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3年前、
だいぶ人間の暮らしにも慣れてきた俺はコンビニのバイトを始めた。
簡単なレジ打ちの仕事だったが、小遣いを貯めるには十分な仕事だった。
和哉も俺が外に出ることは嬉しそうだった。
ますます和哉に会えなくなってしまうから、俺は複雑だったけど、仕方がない。
もともと、和哉のために始めたのだから。
何ヵ月かが過ぎて、空気が冷たくなって、冬が来た。
吐く息が白くなる。
ハーッ、と息を吐いて、和哉が身震いした。
「…寒いなー…」
「手、冷たい」
「だな」
にっ、と笑って、和哉が俺の手を包み込んだ。
触れたところからじんわりとぬくもりが広がる。
「こうしてたらあったかいだろ?」
「…うん」
へへ、と和哉が笑った。
「あ、そーだ」
「?」
和哉が握った手を振りながら思い出したように言った。
「12月24日って、シン、空いてる?」
「24日…」
たしかその日は午前中にバイトが入っている。
そう伝えると、和哉はそっか、と言って、
「じゃ、午後6時に待ち合わせしよーぜ」
と微笑んだ。
「なんで?何かある?」
と俺が首を傾げると、和哉はそっかそっかと呟いた。
「シンにクリスマスをまだ教えてなかった」
「くりすます?」
うん、と頷いて和哉が続けた。
「12月24日はクリスマスって言って、サンタクロースが来る日って言われてる日なんだ」
「さんたくろーす?」
よくわからなくて繰り返す。
「サンタクロースは、子供たちにプレゼントを持ってくるって言われてる。…まぁ、実際にいるのかは俺も知らねーけどな」
ふーん、と言うと、和哉が、
「ま、その日はお祭りみたいなもんで、大切な人に贈り物をしたり、一緒に過ごしたりする日なんだ」
と、なぜか照れたように笑った。
「だから…ちょっと、外食とかしよっかなって思ってて」
「いいね、それ」
だろ?と和哉が笑う。
完璧に分かったわけじゃなかったけど、和哉が楽しそうなんだからいいと思った。
12月24日、
和哉と出かける。
まだ少し先のことだったが、俺はワクワクしていた。
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