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Act1 9
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クリスマス。
“贈り物をしたり、一緒に過ごしたりする日”
だと和哉は言っていた。
バイトを終えた俺は、貯めていたお金を持って街に出た。
もともと、和哉に何かしてあげたくてバイトでお金を貯めていたから、ちょうど良かった。
クリスマス。
大切な人に、贈り物をする日。
「贈り物…」
約束の6時まで、まだ時間があった。
キラキラのイルミネーションや飾り付け。
赤い服を着た、白ヒゲのおじいさんが立っていた。
「……?」
笑顔を崩さないおじいさんをじーっと見ると、全く動いてない。
不思議に思って、指先でツン、とつついてみて、びっくりした。
「…硬い…?」
「お兄さん、それ人形だよ」
「!」
びっくりして声の方を見ると、くすくすと笑う子供がいた。
「サンタクロースの人形。本物じゃないよ」
「……あ、…そう、なんだ」
なんだか恥ずかしくなって、俺は足早にその場を立ち去った。
よりによって子供に笑われるなんて。
頬がカア、と熱くなる。
「……あ」
気づけば俺は、大きなデパートの前にいた。
ショーウィンドウに手ぶくろが飾ってある。
「あったかい…って、書いてある」
大きなパネルに、“寒い冬のプレゼントには、あったかい手ぶくろがオススメ!”
と書いてある。
「……」
じっ、と手ぶくろを見つめる。
値段的には、買えないことはない。
…和哉、手が冷たいかな。
手ぶくろあったら、喜ぶだろうか。
“あったかい”
「………」
迷った末、俺は赤色の手ぶくろを買うことにした。
「プレゼント用に包みますか?」
「あ、……は、い。お願いします……」
一人で街に出るのは初めてだし、買い物するのも初めてだった。
ぎくしゃくした俺の受け答えに、レジのお姉さんがくすり、と笑う。
…今日はよく笑われる。
また頬が熱くなるのを感じた。
「ありがとうございましたー」
青色のリボンがかかった袋を提げて、俺は待ち合わせ場所の噴水前に急いだ。
なんだかんだで約束の時間に近くなっていた。
「和哉…」
早く会いたい。
和哉の、笑顔が見たい。
はぁ、はぁと白い息が出る。
走って来たけど、和哉の姿はまだ無かった。
手を繋ぐカップルや、デパートの大きな袋を持った人が行き交う。
「……和哉」
待ち合わせの、中央広場の噴水前。
時計が6時を指した瞬間、華やかなメロディが鳴り響いた。
「6時……」
「シン!!」
振り返ると
広場の大通りを挟んだ向こう側に、
大きく手を振って笑う、和哉の姿があった。
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