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トキメキ殺しの犯人
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男相手に欲情するなんて馬鹿げてる。俺とハナクソはれっきとしたホモだ。困った。いつのまに俺はホモになったんだ。某掲示板でスレッド立てたらいろんな腐女子が釣れるんじゃないかと思う。なんでハナクソがいいんだろう、わけわかんない俺。教えて全国の腐女子の皆様。
ハナクソの唇は、夏のようにカサついていなかった。普通冬になっていくにつれて荒れて行くだろうと言うと、「だから薬用リップ塗ってんだよ、切れると痛ェから」と言われた。男が薬用リップ。男が薬用リップ。このハナクソはいちいちあざとい。
柔らかい唇に吸い付いたり噛み付いたり、唾液でべっとべとになるまでキスをした。もう一回?一回で足りるもんか、自分がさっきよりもずっと欲張りになっていくことに焦る。
「っ、は…。これで足りたかよ、ハナクソちゃん」
「ざっけんな…!それはこっちのセリフだろーが!」
「テメェが『こんなんじゃ足りない?』つって俺の上にまたがってきたんだろ!!」
「あー?お前こそ『もう一回キスして?』つって何回も何回もキスしてきたじゃねーかよ!!」
「「………。」」
どっちもどっちだ。喧嘩したってあいつが俺の太ももに乗っかってきたのも、俺がこのクソハナクソウンコ野郎にキスを強請ったのも本当だし。あーほんと。俺いつの間にホモになっちゃったの。
ハナクソの家の広めのソファー。いつの間にか体制は俺がハナクソを押し倒してるような、そんな形になっていた。ハナクソはソファーの腕にもたれかかっていて、ハナクソの足の間に俺が滑り込んでいるような。…夢中になったら何しでかすかわからない、この体制はまるで、…。
いや、でも男同士だったらアレか。正常位って難しい、よな。は?つまりハナクソが泣いてる顔は見れねぇってことか?いやいや、まてまて。
…なんで俺、こいつとそこまでいくことを前提にモノ考えてんだ?
ねーよ、だってハナクソは顔色真っ青にして全否定してたし。ねーよ、うん。別にそこまでしなくていいし。俺が女役なんて死んでもごめんだし。つーか!俺たち童貞だし!上手くできねぇ、し。多分。
あーくそ!グダグダ考えんのはやめだ、こいつのために何で悩まなきゃいけないわけ?!まじでうざいわこのハナクソ!
ハナクソから少し身を引いて距離をとる。ハナクソも体制を整えてソファーに座り直すのかと思えば、すく、と立ち上がった。
「どこ行くんだよ。」
「腹減ったし飯作ろうと思って。お前別に好き嫌いねーだろ。あるもんで適当に作るわ」
「……て、つだおうか。」
「えっ、や…平気、テレビでも見てたらいいよ」
「あー、悪ィな、俺料理とか出来ないから任せるわ」
「……気持ち悪っ。お前そんなキャラだっけ、鳥肌とまんねーからヤメテ」
「あ???テメェ俺の好意をなんだと思ってんだよ」
「天変地異。おー、結構いろいろあるな、鍋にすっかー。寒いし。…ワカメ、その好意とやらが残ってんならちょっと来て」
「残ってねぇ、ゼロ。」
「っていいながらコッチ来るなよじゃあ。あの棚の上にあんのガスコンロだと思うんだけど、俺ちょっと届かねぇからとって」
「………チビって可哀想だな。」
「っせぇ!俺は標準以上だって何回言わせるんだよ」
棚の上のガスコンロ、すこし背伸びをしたらヒョイと取れてしまう高さ。これがこのチビクソには届かないらしい。雑魚だ。とてつもなく雑魚。ハナクソは一回舌打ちをかまして「ありがと。んじゃあもうリビング戻れば。」と言った。ムカつく。
「あっ、まってワカメ。リビング戻る前に風呂ためといて」
「やり方わかんねーから無理」
「アホかお前もっとましな嘘つけよ、一緒の創りの家に住んでんだろ」
ムカつく。なに笑ってんのお前。
ハナクソの料理は不味くない。腹いっぱい二人で鍋を囲んで、完食。
俺は優しいから後片付けぐらいはしてやろうとおもって申し出ると、ハナクソは何故か顔を赤くした。こいつ、とくに色白なわけでもないくせに、すげーよく染まるな。なんでこのやりとりで赤くなったのか謎なんだけど、眉間にしわを寄せるとハナクソもそっぽをむいた。
「なに夫婦みてーなこといってんの…」
ぼそっと呟いたその言葉に顔が沸騰しそうになるぐらい熱くなる。な、夫婦?!夫婦っておまえ、な、にいってんだこいつアホか、こいつはダメだほんと殴って意識飛ばして深海に沈めるなり山に祀るなりなんとかしないと。
「ばっかじゃねーの」
ゲシッとテーブルの下でハナクソの脚を蹴る。
「いってぇ!なにすんだよカス死ね!」
ゲシッと脚を蹴りかえされる。それを何度か繰り返したら、脛がじんじんと痛む。ムカつく。先に席を立って片付けの用意をはじめると、ハナクソも「じゃあ、任せた。風呂してくる」といって風呂場に向かった。…風呂、してくるって。お前。
食器を洗ったりテーブルをふいたりしてる短時間の間にハナクソは風呂から上がってきた。早すぎじゃね、と思ったら、ぼたぼたと頭を濡らしたまま脱衣所からでてきた。そのまま髪を乾かしに洗面台にむかうのかとおもいきや、当然の顔でテーブルをふいてる俺のもとにやってきた。
「まじで片付いてる。さんきゅー」
「さんきゅーじゃなくてお前髪、水、ぼたぼたじゃねーかふけよ!」
「あっついんだもんよー、もうちょっと涼んでから」
「風邪ひくわ、貸せ!」
ハナクソの首にかかっていたタオルをつかんで、ハナクソの頭をがしがしと拭く。あっという間に濡れて行くタオル、有る程度渇いたな、とおもったタイミングで手を離すと、ハナクソはこっちを向かず、なにもいわずリビングまで駆けていって、うずくまるように座り込んだ。
「お、まえ、ずるい」
そんな一言を残して。
全く意味がわからない、なにがずるい、謎なんだけど。タオルをイスにかけて、ハナクソの真正面に座ると、ハナクソはバッと顔をあげた。
「もうあんま心臓に悪いことすんなよ、トキメキで死ぬ」
拭いたけど。拭いたけどまだ乾ききってない髪。濡れたままのシルバーブラウンがボサボサのままへにゃってる。髪立ててないとますますチビにみえるな、なんて。なんでこいつこんないちいちあざといのかな、なんて。そんなこと考えるまえに一言を 言わせてくれ、こっちこそトキメキで死ぬわ。
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