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色気魔人の殺し方を教えて
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柳清史というワカメとキスをしたのは別に初めてってわけじゃない。まだ数えれる程、決して多くはない。でも俺の16年間の人生で、キスをしたことがあるのはワカメとだけだ。
ゲイビを見ようって言ったのは、ワカメが言った一言のせい。「キスをしたらその先がしたくなる」といった、あの言葉のせい。俺とワカメは一応恋人だ。恋人同士のキスの先っていったら、恋のABCで言うところの、C。…いや、Bもまだか。うん、でもそういうことだ。どちらにしろエロいこと、だろ。覚悟はしてた。いつかそういう日がくる。俺もあいつも性欲旺盛な男子高校生。…俺はまあ、どちらかといえば薄いほうだけど、でもそんな俺だって恋人に触りたいとは思うわけだ。問題は、その内容なんだけど。
あいつは俺を抱けるといった。ふざけんなっつー話だ。なんで俺が抱かれなければならない?なんでさも当然のように自分が挿れる側の人間になれると思ってるんだ?
抱かれるってことは、ケツにあいつのちんこを挿れるってことだろ、無理だろ普通に。どうせあの体格だ、俺よりデカいはずだ。無理無理、絶対無理。あいつを殺して俺も死んだほうがマシ。痔になるに違いない。なんせどっちも童貞。ゲイビを見ただけで知識はあっても経験はないわけだ、本番、なにが起きるかわからないわけだ。
痔とこの先一生を共に過ごせるか?無理。愛だけでケツを差し出せるか?無理。だって俺も男だもん。性欲は薄くても、挿れたくて当然じゃね?
それをあのワカメは、あのワカメは…!当然のように自分が挿れる側だと思い込みやがって!あー腹たってきた!ムカつく!
そりゃあ、まあ、俺のほうが背も低いし細いし力もちょっとだけあいつに比べれば弱いかもしれないけど、そんなの関係ないだろ!なんだよ、ちょっとイケメンだからって、ちょっとカッコイイからって、…。
あいつが風呂に入る前、脱衣所の扉を開けたことを後悔した。いつ鍛えてるんだって聞きたくなるような上半身、あのボサボサのワカメ頭でさえ色気を放つ武器にみえた。目を合わせられなかった。いつもより早口だったと思う。心臓があんまりにもうるさいから、脱衣所の扉を閉めた後に胸を抑えるほどには、意識は、して、る。
正直な話、あいつの上半身ごときは体育の着替えなどでいつでも見ている。その時は別になんとも思わない。まわりに人がいるからかもしれない。でもほんとになにも思わないんだ。けど、今から風呂に入ろうとしてる人間、しかもゲイビを一緒に鑑賞したあとの恋人。そりゃ意識もする。ドキドキした、嫌になった、あの腕に抱かれる想像が簡単にできてしまった自分に鳥肌がとまらない。
アレを見るまでは抱けるとおもっていた。あいつを責めて泣かせてやろうと思ってた。普段は俺がほんのり劣勢、むかつくけど。だから挽回もできると思ってたわけだ。甘かった。アレを抱けるか?と、もう一度昨日の俺に問いたい。
俺の倍…は、言い過ぎたかもしれないけど、俺より太い腕、俺より割れてる腹筋、発達した胸筋、広い肩幅、骨の太さを上手く生かして綺麗についた筋肉は、到底同じ高校生とは思えなかった。素直に尊敬するし、羨ましい。あんな身体になりたかった。カッコイイと思った。それと同時に、少し諦めも入り混じる。
アレは抱けない。俺には無理。意識して見てしまった俺の完全な負け。
気を紛らわすように歯磨きをしてたら、お風呂上がりのあいつに遭遇。濡れた髪がまっすぐになって、ポタポタと落ちる雫がえらく似合っていた。とんでもない奴を彼氏にしてしまったと頭を抱えて死にたくなった。あいつは色気で人を殺せるとおもう。贔屓目かもしれないけど、少なくとも俺には刺激が強すぎた。死ね。
もだもだした感情のまま、わざと狭いベッドに枕を二つならべた。どうなるんだろう、そういうことをしてみなければどうなるかは分からない。そんな意味を込めて二つ。恥ずかしいから寝たふりをキメてあいつを待っていたのに、あのワカメ…。なんにもしてこなかった。
どういうことだ。それどころか布団を被せてくれた。その上にアホみたいに恥ずかしいことをして三秒で寝やがった。なんだそれ、殺すか。殺すしかないかもしれない。そうしなければ俺が先にトキメキで殺される。こんな些細なことで、いちいちトキメくのももうやめにしたい。次に行きたい、次に行きたいけど、次ってなんだ。ワカメが望んでた次は、アレじゃなかったのか。なんでなんにもしてこないんだよ、なんかしろよ!
結局俺もあいつも爆睡、目覚ましがいつも通りに鳴り響く。先に目を覚ましたのは俺の方。布団は一枚床に落ちていて、俺が被っていたはずの布団はワカメがしっかりと被っていた。つまり俺はこのクソ寒い冬の中、ワカメに布団を奪われたわけだ。なんか寒いと思ったわ、クソうざい、なんの為に俺に布団被せてくれたんだよ。
俺の家の目覚ましは、このワカメの家の目覚ましより早く鳴り響く。なぜなら毎朝俺がこいつを迎えにいくからだ。そして俺が起こすからだ。わざわざ早く起きてわざわざ迎えに行ってやってるなんて俺も大概どうかしてると思う。
憎たらしくて整った顔面を睨みつけていると、目覚ましのうるさい音に眉間にしわを寄せたワカメの瞼がうっすらと開いた。
「………………うるせぇ」
掠れた声、もぞもぞと布団に埋まろうとするワカメ。朝が弱いワカメのいつも通りの行動に苦笑が漏れる。手足がひんやりと冷えた俺の気も知らねぇでこいつは…。一度や二度ほど本気で殴るべきだと思うんだけど。
「飯作ってるから寝てていいよ」
殴るべきだと思うんだけど!!
なんで俺はこう、優しいかな。でもやっぱ憎たらしいからげしっとデカイ身体を蹴り飛ばす。するとむくりと起き上がったワカメが、ゆらっと座った目をこちらに向けた。
やべぇ、こいつ寝起きの機嫌はあんまり良くなかったんだった。さっさと逃げるためにベッドから降りると、ワカメの太い腕が伸びてきた。あ、やべえ捕まる、捻られる。
簡単に壁に押し付けられてしまった。俺の背中は完全にベッド側の壁、両手はベッドにくっついてるけど、その上から暖かいワカメの手のひらが乗っかっている。プロレス技キメられそう、やばい、頭突きでもして目でも潰すか。バッと顔を上げるとワカメはにんまりと笑った。
怖っ、なんだその顔、みたことない表情に冷や汗が。
「すき」
は。
ワカメの唇が、首筋に落ちてきた。は。なんつったこいつ今、は。なに。は。は。は。なに、え、は?!
「……とか、いうと思ってんじゃねぇぞハナクソこらぁ…」
そのままワカメのデコが俺の肩に。もたれかかるようなこの体制、ぐぅ、という寝息。おい、こら。おい。なに、ちょっと、ちょっと、おい。
「離れろ暑苦しいな!!!死ね!!!」
なに爆弾落として寝てんだよ!!アホか!!アホかこの根性無し!!!俺の今の気持ちをどうしてくれるんだ!死ね!
冷たかったはずの手はもうすっかりあったかくなっていた。それがワカメの手のひらのせいなのか、この寝ぼけたボケの言葉のせいなのか、もうわけが分からない、やっぱり早いとこ殺さないと俺が殺される…!
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