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色んな初めて
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いつまで経っても俺胸に頭を押し付けて離れないハナクソの髪をぐいっとひっぱる。必然的に顔が上がる、ハナクソの顔はブスもいいとこ、ほんとブス。涙、鼻水、なに顔だそれ。ブス、ブースブース。
頬を濡らす涙を親指で拭う。俺のその行動にまたじわり。涙がハナクソの目尻に浮かぶ。あーやだ、その顔。どうしたらいいかわからない、ハナクソはよく泣く。どうでもいいことでも泣く。けど、きっとこの細い体でいっぱい、めいいっぱい耐えて、耐えて、耐えて、結論を出してきたんだろう。そして俺の腕の中に帰ってきたんだろう。そう思うと、急にむかつくほどこみ上げる、俺もお前じゃなきゃ、
「嫌だ。その顔」
お前じゃなきゃ。嫌だ。
「笑え、ブス」
前髪をはらって広めのおでこに唇を寄せる。優しいキスってなんだ、よくわかんねぇ。俺らしくねぇ、お前らしくもねぇだろ。一度顔を離して、視線があう。うん。と一度うなづいたハナクソの顎をつかんで、薄い唇に噛み付いた。しょっぱい、涙の味。吸い付く、なめとる、優しくねぇな、ごめんな。
想われるのは嬉しい、それに応えられないのは苦しい。クソ腹立つぐらい真面目なお前のことだから、悩みに悩んだんだろうな。お前すげぇよ、見直した。カッコイイな、…分かってたんだな。古賀の気持ちに。それを、ちゃんと一人で応えてきたんだ。古賀ぁ、ごめんな。ありがとうって言葉は間違ってる気がするけど、俺はこいつじゃないと、こいつじゃないと、こんなに苦しくならない、好きに、なれない。
唇があつい、どきどきする。心臓痛い、すきだ、すきだ、すきだ、
溢れる、ムカつくほど、すきが、こんなに、こんなに。
「すき、だ」
思わず口から零れる。
溢れたら、お前に受け取ってもらうしかねぇだろ、この気持ちは。他に誰にやればいいんだよ。モモちゃんでも、クラスの可愛い女子でも、俺を好きだと言ってくれる人でもない、お前にしか譲れないから。零したら拾って、お前が受け取って飲み込んで。分かって、頼むから。
すきと、ちゃんと言ったことはなかった。言いたくもなかった。だって負けた気がして、負けたって認めたようなもんな気がして。一生、死ぬまで言わなくたっていいと思ってた。分かってるだろって、恥ずかしいんだよ死ねクソがって、でも、今日はいいや。俺の負けでいい。つーか、いつも負けっぱなしだなって、思い返すと笑える。ふ、と笑うと、ハナクソはまたぼろぼろと泣いた。泣きながら、すげぇ笑った。
「お前に言われると、むず痒いな」
「うるせェよ、泣くか笑うかどっちかにしろ」
「笑う。ウケる。はは。あーー、なんだろ、すげぇなお前。」
「なにが、むかつくんだけどその顔」
「今。すげぇ幸せかも」
ごめん俺もうこいつ殴りたい。へにゃ、と、顔が潰れる。おいブス、その顔もやめろ、ムラっとする。やっぱり負けっぱなしってシャクだな、惚れたもん負けってやつ?超正解じゃん。
もう一度、もう一度。薄い唇、かさついたそれに唇を重ねる。あ、唾液で湿ってる、全然かさついてねーわ。キスは何度もした。もう数えきれないぐらいした。それでも足りないとかもうだめだ、俺ほんと、どうなっちゃうんだろう。
このままホモの世界へ?怖。
まじ人生狂った。お前のせいだ。
だんだん腹立ってきた、なんかもうこいつのことめちゃめちゃにして泣いて許しを乞うまで許せない気がしてきた。細、折れそう。あ、それは嘘、さすが男。抱きしめても骨はしっかりしてる。このまま抱きしめて骨全部砕いてやりたい、でもそんなことできない、ほんとに折れんじゃねーかって、そんなわけないのに思いっきり力を込めれずにいる。反吐がでるぜ好い加減、俺じゃないこんなの、こんなの…!
一歩、唇を合わせたまま、抱きしめたまま、進む。一歩、ハナクソが後退る。そのままいち、に、さん、唇を離すのと腕を離すのは同時、細い肩をとん、と押すと、ぽすん、とベッドに座るハナクソ。すかさずもう一度、肩を押す。簡単に男のベッドに倒れこんでんじゃねぇよ、ほんと、何されても文句言わせねぇからなお前。
「………うっそ!!!おま、ええ?このタイミングで?は?!」
状況を把握したハナクソが急に慌てて、体を起き上がらせようとする。
でももう遅い。
俺の体はハナクソの上に。組み敷くようなこの体制、はは、ダッセー、俺、緊張しすぎて変な汗でてきた。
「コーラぶっかけた償いをしろ」
そして俺の純情を、この先の青春すべてを奪った償いをしろ。お前の罪はデカイ。
「それはゴメン!だって古賀ちゃんと顔合わせたら泣きそうだったからさっさと帰りたかったんだって!ほら、タオルで拭いてやったじゃん!」
「ざっけんなてめぇ、アレ拭いたうちに入ると思ってんのか?人の顔を雑巾みたいなタオルで擦り付けやがってコラ」
「あぁん?どこが雑巾だよ!葵の買ってくれたタオルだぞコラ、むしろ崇め、喜べ、ひれ伏せワカメの分際で!」
「うっせ!!ギャーギャーうるせぇよ!つーかお前、結局泣いてんだからホームルームストライキした意味ねーだろアホか?!」
「だ、って!お前が…!」
「俺がなに!」
「…………なんか安心して、泣けたんだもん仕方ないだろ!?うざい、ちょ、お前デカイわ邪魔、どけよ!」
「はぁ?どくわけねぇだろ、俺、言っとくけど結構怒ってんだぞコラァ」
「なんで?!コーラ?!コーラか?!そんなに嫌だったかコーラ!好きだろお前コーラ!」
「コーラコーラコーラコーラうっせぇな!!!ちげぇよバカ!てめぇが泣くからだよ!ムラムラするんだよ!イライラするんだよ!」
「ム…?!はぁ?お前やっぱ二次元歴が長いから頭狂ってんだよ、だからお前頭からワカメ生えてくるんだよ!」
「お前俺が寝てる時にこのワカメいじくりまわしてんの知ってんだからな?!てめぇこれお気に入りだろコラ!」
「ッッなんで!知ってて黙ってんの?!んなこというならこの間お前、俺ん家泊まったとき!寝てる俺の耳にキスしたろ!知ってんだぞ!」
「はあ?起きてたのかよ?!クッソタチ悪いな?!」
「こんな俺も好きなんだろ!?さっき好きって言った!」
「調子のんなブス!全然好きじゃねぇわ!欠片も好きじゃねぇ!もうこの世の全てに謝って死んでくれ!」
「好きじゃねぇならどけよ!この体制ずるいだろ、俺どうがんばってもお前みたいな塗り壁に勝てねぇだろ!」
「も、おまえ…ほんと無理…ほんとうるさい、まじで空気読んで黙って」
うるさいハナクソの頬に手を添える。俺が今からお前になにしようとしてんのか分かってんだろ、緊張してんだぞこっちは!どうもこんにちは童貞です!クソがお前なんかに童貞捧げるとは思ってなかったわ!
「ま、ま、ままままて、落ち着け、とりあえずお前、深呼吸しろ」
「すー、はー。すー、はー。はい、した。」
「いや、なに準備整えてんだよ!俺が女?!やっぱお前の中では俺が女なわけ?!絶対嫌なんだけど?!ケツだぞお前、むりむり考えてみ?うんこするとこだって、そんなとこにてめーのちんこ突っ込むっていってんの?頭イケてる?大丈夫?脳細胞全滅してる?」
「お前こそ落ち着けよ!ほら深呼吸しろ!」
「すー、はー。すー、はー。…した。」
「お前俺のこと抱けんの?」
「え、無理。塗り壁」
「じゃあ黙って寝てろ!俺の女になれよ!」
「いやだぁぁぁ!全然ときめかねえええ無理無理このワカメまじ、おま、…ちょ、っと、ほんとケツは待って、ケツは無理、俺に時間を」
こいつはアホなんじゃないのか。
俺に時間を、なんて言われたら期待すんだろ!お前、本気で俺に抱かれてくれんの?信っっじらんねぇ、…まじで?
思わず固まると、ハナクソはふい、と顔をそらした。なんだその意味深な反応。
「だって俺もお前、すきだもん」
もーーーーーーーーー、無理。
顔、熱い、むり、ちょっとこのあざといハナクソなんとかして。誰かティッシュにくるんで捨てて。もう無理、やだ、むり、こんなんじゃ心臓もたねぇ。
す、とハナクソの上からどいて、頭を抱えるようにベッドに座り込む。ちょっと色々考えさせて?
えーっと、俺数分前なんつったっけ?めちゃめちゃにして泣いて許しを乞うまで?許さない?は?むりむり、許すわもう。なんでも許す。今のは、反則もいいとこじゃね?いやもういい加減にして、まだ生きたい。
「ちょ、っと。そんな赤くなんなよ!俺まで恥ずかしいんだけど!」
「お、ま、もう黙るか死ぬか選んで」
「おいヘタレ、しねぇの?」
俺が頭を抱えてる間にいつの間にか起きあがってたハナクソがじり、とこっちに寄ってきた。なんだよ、中断させたのお前だよ、わかってんの?
やっぱりこいつの罪は重い。重すぎてもう誰も罰することができない。
甘やかして許してしまう、なんつーザマだクソが…!
ベッドの上に、男が二人。向かい合って座ってる。シュールな図だなオイ。顔を上げると、さっきまで泣いてたとは思えないぐらい顔を赤くしたハナクソが、俺のことをじっと見ていた。
「こっち見んな!」
「お前がヘタレてるなら俺がやる」
「おお、ぉ、お?おい、まてコラ、ちょ…っ!」
ハナクソの腕が俺の肩に伸びてきて、体重をかけられたら自然と体が後ろに倒れる。ごんっと壁に一度頭を打った、痛い。だけど今度は立場逆転、俺の上にハナクソが跨ってきて、あ、これ、この間も見たなこの光景。
「ハッ、いー眺め」
ニタリ顔、むかつくんですけど。
こいつ俺のことヘタレだと思ってんのかナメくさってんのか知らねぇけど、全部我慢してやってんだよバカが、こんなことされたらさ、そりゃあ、もう、オッケーってことだよな。
なぁ、俺お前に負けっぱなしでさ、もう負けるわけにはいかねーの、わかる?
ハナクソの胸ぐらをつかむ。あ、セーター伸びたらゴメンネ。引き寄せる。倒れこんでくるその体。重い、かも。一度抱きしめて、そのままベッドに転がした。また俺が上。何やってんだ俺たち。
「……プロレスか!」
「奇遇だな、俺もそう思ってたわ」
「…いいんだな?」
「ん、まぁ、…あの、痛くねぇの、頼むわ」
赤い頬、耳、首筋、鎖骨。やべぇ、やべぇ、やべぇってだから!手汗、かいてんだけど。ベタベタするって思われたら嫌だな、とか、こいつ緊張してやがる、とか、思われたくねぇなとか、頭の中では考えてるんだけど、…もうむり、止まらない。
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