アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
最後の挨拶①※R18
-
(いよいよ明日は卒業式か…)
伊佐敷純は、関西の大学に進学が決まっていた。
野球は、続ける。
先の世界を見るために。
寮を出る準備も済み、ガランとした部屋で
翌日の支度などをしていると、ドアをノックする者がいた。
そろそろ就寝の時間なのに、と訝しく思いながら
ドアを開けると、御幸一也が立っていた。
純と同室の楠木は、既に実家に戻っていて、
1人でいる事を どこかから聞きつけたらしい。
「純さん♪今日は泊めて下さいね 」
ニコニコと上機嫌で言ってくる。
「 あ ?」
純がしかめ面で 答える。
「明日は卒業式だから、基本的に自主練なんスよ? こんなチャンス、逃す訳ないでしょ?」
何がチャンスなんだか、と純が言い返そうとするより早く、御幸が強引に抱き締めてくる。
「もう会えなくなるかも知れないのに…
今夜くらい、一緒に居させて下さい… 」
純の首元に顔を埋め 御幸が呟くように言うが、その語尾は震えていた。
(ったく………。強気で来られりゃ抵抗してやるのに…何で弱みを見せるんだよ……っ)
「なあ、御幸。前にも言ったけど、オレは好きなヤツがいて……
その、夏の時は、オレも自棄になって、お前に
迷惑 掛けたが、やっぱりオレは……」
「純さん。何で今更そんな事 言うんですか?
あの時はオレの腕の中で あんなに甘えてくれたのに。その後だって、オレがキスするの拒まなかったじゃないですか!
それなのに、オレより好きなヒトいる、とか
まだ言うんスか ?! 」
「……うっ」
鋭く指摘され、純が口ごもる。
あの夏大の夜は、純は自分で自分を もて余し、
御幸の熱で救われた と思っている。
その後に、何度か落とされた口づけは、
いつも不意をつかれ 拒む前に離されていた。
御幸のコトは嫌いではない。
嫌いではないから、わざわざ教室まで来る御幸を
受け入れていた。
(ただ、どうしたって、忘れられない………
哲への想いは消せないし、上書きも出来ない………!)
純の想いは、堂々巡りを止めない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
76 / 85