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〃 ⑨
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ようやく御幸の瞳に不敵さが宿り、自分を見つめる純の目を捕らえる。
「純さん! オレ、諦めるとかナイですから。
今まで本当に大好きだったですから!」
“ 大好きだった ” と、過去形になっている自分の言葉に、御幸は驚く。
と、同時に、気負いのような何かが落ちた気がして
スッと楽になる自分を感じる。
「純さん、オレ、ほんとに…っ」
急に涙が 込み上げてくる。
「御幸! 一番手っ取り早いのは、な。
お前がオレを惚れさせること、だ!
甲子園で せいぜい暴れてこい。
オレが ほぞを噛むくらい、活躍してみせろ!
ダハハ」
純が晴れやかな顔で言うのを見て、御幸の顔も
ほころぶ。
泣き笑いのような表情の御幸が、もう一度 純の姿を
目に焼き付けようとする。
「じゃあな!!」
純が背中を向けて3年生のもとに戻って行く。
追おうとする御幸と、純の間に一瞬、強い風が
吹き抜ける。
風に巻かれて、純の姿が消えてしまう。
しかし、それは 涙に霞む御幸の目が見せる幻影で、
純は既に3年生達の中に居て、笑い合っていた。
(純さんの笑顔…色々な純さんの顔を見たけど、
笑顔が一番いい。心が温かくなるような笑顔…
いつも前を向いている背中…
絶対、ぜったい諦めない……忘れない…!
もっと成長して、純さんに惚れてもらうっ)
腹の底から力が湧いてくる気がして、
「純さーん! 後悔しても知らないですよっ!」
と、御幸が大声で呼び掛ける。
純に届いたか分からないが、一瞬、目が合った気がした。
それで充分だ。
御幸は、深く息を吸う。
そして、大きく息を吐く。
自信たっぷりに一歩を踏み出す。
純の最後の挨拶を胸に留め、再び強く吹いた風を
片頬で受け、御幸は仲間のもとに戻る。
きっと、何処にいても応援してくれる。
見守ってくれる。
そんな愛しい人との
“ さようなら ” から始まる約束を
現実のものとする為に。
おしまい
エースな外野 〈完〉
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