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ホーム担当-3-
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急いで着れば早いもので、俺はジャケットの最後のボタン留めようとしていると香坂が「そういえば」と呟いて此方を見た。
「そういえば、里中が見た変な夢ってどんな内容だったのか気になるんだよね。やっぱり教えてくれない?」
香坂の一言に、ボタンを留めていた手が止まる。バクバクと心臓が早く鼓動して、変な汗が背中に伝う。
まさか香坂にまた夢の話をなんて微塵も考えていなかった。どう答えていいのか頭を必死に働かせても答えは出ない、そればかりか足元がぐらつく感覚に襲われる。
俺は、それでも口をパクパクさせてようやく言葉を絞り出した。
「い、いっ……いやぁ。俺もう覚えてないんだよ。悪い悪い」
吃った事を隠すように作り笑いを浮かべながらボタンを留めて手袋をはめた。
笑いながら、香坂の顔を見ると納得いかないという顔をして此方を見ていた。
その顔を見て、瞬時にバレていると分かり作り笑いを止めていたたまれなさで顔を下げた。
気を逸らそうとギュッと拳を握っていると、くしゃくしゃと頭を撫でられて顔を上げた。
其処には、どこか寂しそうな顔をした香坂が俺を撫でていた。
こんな顔をさせたかった訳じゃなかったのにと思いながら拳を握る。
「そんな顔するほど嫌な夢だったんだね。思い出させてごめん」
「いや、こっちこそ悪い……」
ごめんと言いかけた時、スピーカーから文化祭についての放送が流れ出した。
放送委員が淡々と注意事項を述べていくなか、どこか気まずい空気のなか香坂を見た。
香坂は、俺と目が合うとまた頭をくしゃくしゃと撫でて、襟を直していつものように笑いながら更衣室を出て行った。
「ごめん香坂。でも、あんな夢を絶対に誰にも教えたくなんかないんだ」
残された俺は、もういない香坂に謝りながら自分の頬を気合いを入れるために叩いた。
もうこれ以上夢の事なんて思い出さなくていいように、ただ楽しめるようにと頬をもう一回叩いて襟を直しているとシャッ!!と思い切りカーテンが開いて林の声が飛んできた。
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