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休憩-1-
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12時を過ぎたと言っても未だにうちの模擬店は女子達で賑わっているが、殆どの生徒がちゃんとしたご飯を食べに行ってるせいか人は余り入って来なくなった。
俺は、一通りの接客を終えて準備室で座っていると林が満足げに笑いながら俺の肩を叩いた。
「大体捌き切ったわね。最初は心配だったけどちゃんと出来たじゃない。旦那様って言ってたのは意外だったけど」
「頼むからそれには触れないで下さい」
林は俺がげっそりしているのが面白いのか楽しそうにクスクスと笑っている。
林が知ってると言う事は、和久も絶対に知っているという事事実に溜め息しか出てこなかった。
「まぁまぁ、そんなに落ち込まないの。頑張ったから休憩に入っていいわよ」
「ありがとう。もう正直心が折れかけてた」
俺がそう言うと、林は慰めるように背中をポンポンと叩き他の裏方にも休憩の事を言いに行ってしまった。
俺は、休憩という二文字の有り難みをしみじみと感じながら、暫く接客しなくて良いと思うと気持ちが楽になって自然と伸びをした。
何度か伸びをしていると目の前のカーテンが開いた。カーテンの先には香坂が紙コップを持って立っていた。
香坂は、伸びをしている俺に驚いたのか何度かまばたきしたが直ぐに準備室に入ってきた。
香坂は、一通りの接客を終えた俺とは違い女子生徒達が離してくれないせいでずっと接客しているらしい。
接客の大変さが分かるからこそ、ずっと接客して笑顔を崩さない香坂は本当に凄いと思う。俺には到底出来ない事だ。
そんな事を考えながら伸びを止めて、香坂に話し掛けようとしたが、香坂の方が先に話掛けてきた。
「里中お疲れ様。今から休憩?」
「香坂こそお疲れ様。あぁ、香坂は?」
「おれはどうなのかな? でも、出来れば里中と一緒に休憩に入りたい」
香坂が微笑みながらそう言った時、他の裏方に伝え終わったのか林がこっちにやって来た。林は、香坂を見ると首を傾げながら腰に手を置くと喋り出した。
「香坂、接客はどうしたの?」
「ジュースのお代わりを取りに来たんだ。林さん、この接客終わったら休憩に入ってもいいかな?」
「……駄目に決まってるじゃない。稼ぎ頭の香坂が居なくなったら女子生徒達も帰っちゃうでしょ。売上落ちまくるし、香坂は落ち着くまで休憩なんて無いわよ」
林が、真顔でそう酷い事を言い放つと香坂は悲しそうな表情を浮かべてはぁーっと深いため息を吐いた。
林は、そんな香坂の事なんて気にもせず売上表に目を通して準備室から出て行ってしまった。
俺は出て行く林を見ながら、つくづく色んな意味で凄い奴だと変な感心をしながら香坂に視線を移した。
香坂は、林の背中を見ながら困ったように笑っている。俺は、香坂が気の毒になって元気付ける為に肩をポンポンと叩くと首を傾げて俺を見た。
「里中?」
「そんなに落ち込むなよ。香坂の好きな物買ってくるからさ」
「……本当? 嬉しいな。じゃあ、里中の好きな物買ってきてくれない?」
「え? 香坂の好きな物じゃないのかよ」
「おれは里中の好きな物が食べたい」
まさか、俺の好きな物を買ってこいと言われると思わなくて困惑しながら言うと、香坂はニコッと笑った。
困惑しながらも香坂が元気になったのでまぁいいかと思っていると、林がカーテンを開けて何かを差し出してきた。
「里中、これ校内のパンフレット渡し忘れてたから渡しとく。他の裏方もう休憩に入ってるから早く里中も休憩に入って」
「分かった。ありがと」
林の用事はそれだけだったらしくパンフレットを渡すと、カーテンを閉めてどこかへ行ってしまった。
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