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後輩達のお化け屋敷
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俺は、伸びをしながら立ち上がり小さく欠伸をすると焼きそばを持って歩きだした。
歩き出したと言っても、特に目的もしたいことも思い浮かばず、なんとなく一年生側の校舎に入ってみた。
香坂のお土産も買ったし、今から誰かと一緒に文化祭を回るのも気が引ける。
俺は、楽しそうに歩く後輩達を眺めながらこれからどうしようかと考えてみたが、良い案も浮かばず取り敢えず休憩終わるまでブラブラと歩き回る事にした。
「一年生は元気だなー」
などと一人で呟きながら、ブラブラと歩きながら一年生側の模擬店は殆ど回り終え、そろそろ帰ろうかと思った瞬間、きゃぁぁ!!と甲高い悲鳴が後方から聞こえて来た。
いきなり、悲鳴が耳に飛び込んできて何かあったのかと俺が振り返るのと同時に、半泣きの女子生徒達が逃げるように模擬店であろう教室から飛び出して来た。
悲鳴の主だろう女子生徒達は廊下に座りながらお互いを慰め合い涙を流している。
そんな光景を、道行く生徒達は心配そうにされど物珍しそうにじろじろと不躾な視線を送っている。
女子生徒達は、視線に気がついたのか恥ずかしそうに頬を赤らめながら、勢いよく立ち上がると早足で逃げて行った。
そんな女子生徒達の背中を見送って、女子生徒達が飛び出してきた模擬店に目をやると、其処にはおどろおどろしい字でお化け屋敷と書いてあった。
俺は、引きつる顔を隠しながらゆっくりと後ろへ下がる。
よりによって、文化祭の中で一番近寄りたくない、かつ見ないようにしていたお化け屋敷の近くに来てしまうなんて思ってもなかった。
取り敢えず、此処から遠ざかろうと思い後ろを振り返り歩き出そうとした瞬間、後方で聞き慣れた声が聞こえてきて俺の足は止まった。
「あれ? 司さん!? 司さんだ!!」
恐る恐る振り返ると、其処には死んでいるのかとでも問いかけたくなるくらい血色の悪い顔で、口の端から赤い血を垂らしながら飼い主に会えた犬のように喜んでいる康汰がいた。
俺は康汰の口の端から血が瞬間、忘れていた夢の中のあの康汰を思い出して無意識に後ずさる。
背中に嫌な汗が伝う感覚に無意識にYシャツの裾を強く掴んだ。
俺の様子に気づいていない康汰は、見えない尻尾を振りながらこちらへと嬉々としながら向かって来ている。
俺は、何で康汰が夢の中のように口の端から血を垂らして微笑んでいるのか、理解が追い付かなくなり動かなくなった足へと視線を向けた。
そのせいで、何時もなら軽くあしらえる筈のタックルのような飛び付きも避ける事が出来ず見事に後輩に往来で抱き締められた。
「司さんに会えて良かったー。オレのクラス模擬店がお化け屋敷なんで、絶対会えないだろうなって思ってた所なんですよ」
「康汰のクラスの出し物がお化け屋敷ってのは知らなかった。言ってくれば立ち寄るくらいはしたさ、立ち寄るだけだけどな。……康汰、それより暑苦しいし変な目で見られてるから今すぐ離してくれると嬉しい」
「あっ、すいません。オレ、司さんに会えたのが嬉しくてついつい……そんな事言ってお化け屋敷だって言ったら司さん立ち寄りもしないじゃないですか」
康汰は若干不貞腐れたような仕草を見せたあと明るい茶色の前髪を目の前で揺らし人懐こい微笑みを浮かべると俺から離れた。
俺は、康汰を見て夢を思い出さないように視線を上手く口元から外しながら作り笑いを浮かべた。
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