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後輩達のお化け屋敷‐3‐
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いきなり視界を遮られ心臓が一瞬止まり呼吸が出来なくなった。夢の出来事を思い出しガクガクと体が震えだし倒れ込みそうになる。徐々に足の力が抜けていくのを感じる。
後ろに視線を向けても何も見えない。誰が居るのかも分からない。
「嫌だ! 怖い! 嫌だ! 助けてくれ!」と脳内で俺の叫び声がこだまする。脳内でいくら裂けんでも声が出なくてただ震えていると手が離れ後ろからぎゅっと抱き締められた。
後ろに視線を向けるより先に「先輩」と渉の呼ぶ声が耳に届き視線を向けると犬耳を着けた渉が肩に顎を乗せていた。
渉は黒目に俺を写しながら「先輩。僕が怖い?」と尋ねてきた。嘘は許さないというようは渉の視線を浴びながら微笑む。
「ごめん。今日、手で瞼を塞がれて殺人犯に拷問されるっていう怖い夢を見て目を塞がれるのが怖いんだ」
「前日にホラー映画でも観た?」
「見てない。渉目立つから離してくれないか?」
「見てないのに悪夢見るなんて先輩疲れてるんだね。人って抱き締められると癒されるんだって。先輩このまま僕に癒されたら今夜は怖い夢見ないよ」
渉は更に抱き締める力を強め、俺の頭も優しく撫でだした。いつも通りの渉に自然と体の震えは止まっていく。
有難いけれど止めてほしい。すれ違う女子達の視線が痛い。
本当に渉には話が通じない。香坂はあんなに人当たりがよくこんな不思議ちゃんではないのに兄弟で此処まで違うものなんだろうか。
すれ違う女子たちから痛いほどの視線を浴びせられて困り、放置されて拗ねている康汰に視線を向け口パクで「助けてくれ」と言うと破顔して見えない尻尾をブンブンと振りながら俺と渉を引き剥がした。
やっと自由になれてほっと一息吐くと渉が康汰に「なんで邪魔するの」と詰め寄っていた。
詰め寄られた康汰は「司さんを困らせるな」と俺に絶対に向けないような険しい表情を浮かべ渉を睨み付ける。
俺のせいで、一瞬で険悪になった雰囲気に頭を抱えながら近寄り二人の頭をわしゃわしゃと撫でる。驚いた表情を浮かべた二人は俺の事を見つめている。
先に破顔したのは康汰だった。康汰は俺の手のひらを取って頬擦りしたあともっと撫でてという視線を向けるので髪の毛をぐしゃぐしゃにする勢いで撫でてやる。
渉は俺と俺の手を交互に見たあと微笑み「先輩」と一言呟いた。渉の微笑みを見て女子たちが足を止め何かを叫んでいる。
なんだかサーカスの猛獣使いにでもなった気持ちで二人を撫でる。二人が怖い気持ちも全部無くなればいいと思いながら撫で続けてやった。
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