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好きなんて
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本当に、ゆうは、あの金髪と一緒に居るんだな。
今までは、この、普通のアパートに、二人で住んでたのに…
お世辞でも綺麗とは言えない部屋でも、俺は楽しかった。
そりゃ男二人の私生活に、『掃除』っていう日課は見当たらない。
月に一度くらい、パパッと適当に掃除機をかけるだけだけど、それでも、俺はこの部屋が好きだった。
近くにコンビニもないし、不便すぎるけど、俺はこの部屋が好きだ。
ここに住んでから、ゆうの全てを知った気になってた。
でも、それもそうだろう…
出会ったばっかりのゆうは、
どこか冷めてて…静かっぽいけど、実は割と喋るし…綺麗な顔してんのに口は悪いし…痩せて見えるけど体はガッチリしてるし…背は高い方で…
でも一緒に住むようになってから
寝起きはすごい悪くて、癖っ毛で、毎朝ドライヤーとワックスで髪の毛を整えてて、香水は女性物が好きなんだって。
そういえば、昔、浮気してんのかと思って喧嘩になったな…
そしたらあいつ
『俺の香水だってば』
って怒ってたし。
甘くて、キャンディーっぽい匂いが好きらしい。
そのせいで俺も女性物使うようになったんだっけ。
あとは…あいつは洋楽を好んでよく聴いてる…
だから何故か英語の発音が良いんだよな…歌ってる時だけは。
はぁ…
なんでも知ってると思ってたのに、
ゆうがあんなに不安だったのを、俺は知らなかった。
知ってないといけない事を、知らなかった。
しかも、俺も逆ギレしてしまって、マジで情けない。
こんな俺よりも、あの金髪なら、ゆうを笑顔にできるんだと思う。
中山のいう事聞いてよかった。
俺はもう、ゆうにとって、要らない存在なんだから。
俺は、ゆうを困らせて、苦しませて、傷つけてばっかだ。
ーーーー
「入江先輩…あの、報告書書き終わりました」
「そうか…プリントする前に、暇してる奴に一応目を通してもらえ…誤字とか無いように」
「はい…」
「ご苦労、休みに入って良いぞ」
「あの、」
どんだけ落ち込んでても、仕事は休めない。
俺がイライラする資格は無いのに、やっぱり機嫌が悪くて、タイピングがカタカタといつもより雑で余計にイラつく。
部下ができる奴でよかったと初めて思った。
でも休みに入れと言ってるのに、こいつは俺の横にまだ立っている。
「なに?」
「コーヒー、買ってきますね!」
「は?」
何を言い出すのかと思ったらコーヒー?
こいつはコーヒー係から昇格したじゃないか。
「いや、いいけど」
「いや、コーヒー持ってきます!」
「え、ちょっ…」
要らないって言ってんのに走って…コーヒーを買いに行った、らしい。
「なんなんだ」
「あははは、入江くんのご機嫌が斜めだからじゃない?」
「え、バレバレでした?」
「おう!オーラまで真っ黒でさー。気が効く部下がいてよかったじゃん」
「そうっすね」
あー、なっさけねえの。
私情で部下に余計な迷惑かけてるし…
本当に、馬鹿らしい…
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