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毒林檎はじわじわと
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「っはぁ、ッゲホ……ゴホッゴホッ……」
走ったせいなのかそれとも小島くんの言う風邪なのか、俺の咳は更に酷くなっていた。
「っはぁ、っは……っはぁ……」
目を閉じてゆっくりと開ける。世界はまだ灰色のままで、モヤモヤも晴れない。
「三浦?」
「っはぁ、秋野……くん」
そこに居たのは秋野くんだった。カバーの掛かった本を片手にベンチに座っている。
さっと本を後ろに隠す。
「き、奇遇だな。どうしたんだよ」
心なしか焦っているようにも思えるのだが……気のせいだろうか?
「いや……あの秋野くん。その本」
その本、と言った瞬間に分かりやすいぐらい飛び上がった秋野くん。え、秋野飛び魚か?
「こ、この本がな、なんだッ!?」
凄い動揺だ。秋野くん、まさか破廉恥な本を読んでたりするのか……?気になる……
俺はじりじりと秋野くんに近付く。反対に逃げていく秋野くん。
「秋野くんは本好きなのか?」
「っでぃ!?す、すすすすすきに決まってんだろ?」
「どんな本を読むんだ?」
「ど、どどどどどどど童話だ。童話。ほら、心が初心に帰るんだ……!」
初心に帰りすぎじゃないか?そうは思ったが童話は素敵だ。秋野くんが読むのもわかる。
俺も懐かしくてたまに読んだりするしな
「そうか、童話か。素敵だな」
「お、おう」
自分の愚かさに気づかされ、秋野くんのピュアさに俺は自分を恥じることにした。
「じ、じゃあ俺はイク。じゃあな」
秋野くんが立ち上がった瞬間、パサリと本のカバーが外れて本が地面に落ちる。
『赤ずきん♂×♂~狼さんのぶっといのが欲しいのぉ~ 著やらないか』
「…………」
「ああああああああああ!!!!」
本のタイトルにはそう書かれ、表紙には男同士が深く絡み合う絵があった。
「…………引いただろ…………」
消えそうな声で、顔を真っ赤にしながら本を拾い上げる秋野くん。
「引く?何故だ?」
「え、」
「男同士の恋愛に偏見はない。秋野くんがそれに関しての本を読んでいても、気にしていない。
好みは人それぞれだ。人から理解されにくいのは分かる、けど俺は批判しない。
秋野くんは秋野くんだしな」
「……ありがとうな、三浦」
秋野くんはギュッと本を握ると、少し俯きがちにお礼を言った。
「ところでぶっといのが欲しいとはどういう意味だ?」
「後悔すんじゃねぇーぞ?」
「え、ちょっと待ってくれ。秋野くん、秋野く、アーッ♂」
その後、深く語られたのは俺にとって忘れられない思い出となった。(意味深)
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