アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
もうひとりの自分
-
彼は突然現れた。
まるでずっと前から私の傍にいるように。
いや、ずっと前から私の傍にいてくれている。
彼は完璧な人だ。
私にはないものをたくさん持っている。
料理に洗濯に掃除、ゲームまでもが私より優れている。
「マックスコーヒー、買ってきて」
「この新作ゲーム買ってきて」
「お風呂一緒に入る?」
そのせいか彼には逆らえずにパシリのようなことをしている。
最後のは…気にしないで。
彼は神様のようなものらしい。
私と同じ“きりん”という名前らしい。
私はキリン、彼は麒麟。
姿形は似ている。
中身は全然違う。
私にないものを持っていたせいか、彼に惹かれつつあった。
だけど彼には“感情”がないらしい。
だから好きと言っても彼には意味が分からないべ。
この気持ちは私だけのもの。
「もう一人の私よ、一つ聞いてもいい?」
「その呼び方はやめてください、麒麟さん」
「同じ名前だからこんがらりそう」
「表記が違いますから」
麒麟さんは私の名前を呼んでくれない。
「じゃあ、キリン」
「はい、なんでしょう」
不意に名前を呼ばれて少しドキッとする。
ホラーゲームやっててもこんなにドキドキすることはない。
平常心を保って返事をしたんだけど大丈夫だったか。
「れんあいって何?」
「ぶほっ!ケホケホっ。急になんですか」
私は飲んでいたマックスコーヒーを盛大に吹き出してしまった。
「この小説に書いてあった」
「柄にもなく恋愛小説なんて読んでたんですか」
「たまには違うジャンルも読みたくて」
「恋愛というのは説明するものではありません」
「ふーん。キリンはれんあいというものをしたことがあるのか?」
またマックスコーヒーを吹きそうになった。
「ありますけど」
現時点で貴方にしてます。
そんなこと、口が裂けても言えないけど。
「私もれんあいというものをしてみたい」
「恋愛は一人でするものではありません」
「じゃあ、キリンがさせてくれる?」
「なんで私が…それに恋愛は基本は男女でするものです」
「基本は、でしょ?男同士でも問題はないんだな」
麒麟さんの言葉に何も返せない。
そういう人達もいるしなくはないと思うけど。
相手は神様なわけで。
私なんかが釣り合う人間ではない。
「れんあいを教えてくれ」
そんな笑顔で言われたら断れないべ。
私だって男なんだから理性が保てなくなっても知らないんだから。
「はぁ…分かりました。その代わり、覚悟しててくださいよォ」
神様との生活はまだまだ続きそうです。
2016.7.13
もうひとりの自分【完】
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
36 / 37