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繰り返しの嬉しい
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あれから騎亥と、刻印の話は、していない。
それどころか、日常の会話さえも、減っている気がした。
3度目の【試供】。
いつものようにハロは、そっと扉を開き、ゆっくりと頭を振るった。
ハロの瞳は、やっぱり、包帯の裏へと隠されていた。
ハロは不安げに、部屋へと足を踏み入れた。
前回、嬉しそうにハロの名を呼んだ騎亥は、黙ったまま、ぼんやりとハロの様子を窺っていた。
「ハロ…」
焦れた俺が、先に声を放った。
ぱっと、顔に笑みを湛えたハロは、嬉しそうに、俺の名を放つ。
「華亥さまっ」
たたっと走り寄ったハロは、ベッドの前で足を止め、開いた俺の腿の間へと、身体を滑り込ませた。
膝立の格好で、俺の腰に、ぎゅっと抱きつく。
俺は、隣に座る騎亥の手を取り、ハロの頬へと導いた。
ハロの頬に触れた騎亥は、柔らかな笑みを唇に浮かべ、小さく名を呼んだ。
「ハロ……」
堪えきれない喜びが口から零れ落ちるように、ハロは、歯を見せながら笑んだ。
「騎亥さまっ」
微かに頬に触れる騎亥の手を、ハロは、きゅっと握った。
ほんの少しだけ触れ、直ぐに離れようとする騎亥。
逃げゆく熱を追うように、ハロは、騎亥の手を捕まえた。
片腕を俺の腰に回し、抱きつくハロの頭を撫ぜる。
「3度目だね。これで、やっとハロが買える」
ハロは、俺の言葉に、驚いたように顔を上げた。
「買ってくださるんですか?」
弾けるような音を立て、嬉しそうに言葉を紡いだ。
「うん、買うよ。『俺たち』が、ハロを飼う」
ハロは、俺の腰に巻き付けていた身体を離し、上体を立てた。
騎亥の手を握りしめたままに、俺の膝へとよじ登る。
ぼふっと音を立てるように、俺の胸元に顔を埋めた。
「嬉しいです。…凄く、凄く、嬉しい…っ」
喜びを表現する言葉をそれしか知らないように、ハロは何度も何度も『嬉しい』と呟いた。
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