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嫌ったって変わらない
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涙を拭った華亥の手が、僕の胸を指差した。
「上っ面で誤魔化しても、ここに溜まってくんだからな」
感情を殺すような冷えた声で、華亥は、言葉を紡いだ。
苛々とする感情に、僕は、投げ捨てるように言葉を放つ。
「なんでも口に出せばいいってもんでもないだろ?」
僕の言葉に触発されたように、華亥は、怒りに声を荒げた。
「言わなくたってある程度わかるんだよ、お前の気持ちなんてっ。でも、言わなきゃ、言葉にしなきゃ伝わらないことだって、あるんだよっ。いくら双子だってわかんねぇことだってあるんだよっ!」
上手く伝えられない想いに、華亥は、自分の髪を掻き毟る。
あーっと鈍い声を放った華亥は、ギッと僕を睨みつけた。
「何でもかんでも我慢すんなよっ」
華亥に、怒鳴られる謂れはない。
余計なコトを言って、拗れるくらいなら、僕は口を噤む。
ハロのコトだって、華亥がハロを好きなコトを知っているから、それなら僕は、……。
「我慢なんて、してないっ」
怒気を孕む声を放ち、睨めつける華亥の瞳に負けないように、僕もじっと睨み返した。
「じゃあ、これ、何なんだよ?」
華亥は、涙の痕が残る僕の頬を荒く拭う。
「好きって気持ちは…、我慢できるものじゃない。消せるものじゃない。素直じゃない騎亥は………嫌いだ」
ぐっと顔を歪めた華亥は、苦しそうに、絞り出すように、言葉を紡いだ。
譲れない想いがあるなんて…、僕は知らなかった。
でも、素直になんて、なれる訳ないんだ。
僕は、もう、大人で。
そんな子供のような我儘は、言えない。
幼い頃、僕は、ずっと華亥を…傷つけていた。
僕の我儘は、華亥を傷つける。
嫌いだって言われたって、華亥は僕の双子の兄。
その関係は、変わらない。
嫌っていたって僕たちは…、離れる事なんて出来ないんだから。
「嫌いで……、いいよ」
ぼそりと声を放ち、すっと外した僕の視線に、華亥は、呆れるように息を吐いた。
「………ケンカ…、しないで下さい」
今まで、僕に黙って抱きかかえられていたハロが、ぼそっと声を漏らした。
僕の胸元で、きゅっと手を握り締めたハロは、イヤイヤをするように、頭を振るった。
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