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ピアノが響く冷たい部屋
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そこは、コンクリートが剥き出しの、冷たい部屋。
背に触れる壁は、コンクリートの冷たさをそのまま、ボクに伝える。
ユニットバスと、小さな洗面台と、ベッドしかないこの部屋。
この部屋には、きっと、窓なんてない。
でも、目の見えないボクには、本当のところは、わからない。
ボクの世界は、昔から真っ白だった。
だから、ほんの少しの空気の流れや、肌に触れる感触や、耳に届く音に敏感になったんだと思う。
ボクの足首には、皮製の足枷。
そこから伸びるのは、重たい鎖。
鎖の先は、ベッドの脇にある半円を描く突起に結ばれている。
足枷にも、鎖の端にも、外れないように、南京錠がつけられている。
こんなことしなくても、ボクは逃げたりしないのに。
ボクは、この部屋にある唯一の家具、大きなベッドの上に、ぺたんと座り、背を壁に預けている。
そのベッドは、薄いシーツが引かれ、薄い毛布が乗せられているだけのもの。
服なんて、存在しない。
この頃のボクは、目元の包帯もしていない。
ボクは、何も身に着けずに、ただ、ベッドの上に座っている。
部屋は、空調が効いていて、裸体で居ても寒くは、なかった。
――♪♪~♪~♪♪~
響いてきたのは、ピアノの音だった。
ガチャっと音を立てて開く扉に、見えない瞳を向け、にっこりと笑ってみる。
ぺたん、ぺたん、とだらしなく歩く琉(りゅう)に、ボクは壁から背を離し、逆の端へと身体を移動させた。
わさわさと感じる雰囲気は、琉が歩きながら、無造作に髪を掻いているからだろう。
琉は、ギシっとスプリングを軋ませて、ドスッと腰を下ろした。
「イイコにしてたか? ハロ」
琉の手が伸び、まるで猫を愛でるように、ボクの顎を擽る。
擽ったさに、ふふっと小さく声を漏らし、言葉を紡ぐ。
「はいっ」
ボクは、琉に抱きつこうと、両手を伸ばす。
「待て、待て…」
首元を、ぐっと片手で掴まれ、ボクは、動きを止める。
少し力を入れられれば、ボクは簡単に絞め殺されてしまいそうだった。
「俺のコト…、汚す気か?」
不遜げな声色で言葉を紡ぐ琉に、ボクは、慌てて手を引っ込めた。
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