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与えられる選択権
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いつも鳴り響くピアノを弾いていたのは、兎羅で。
その音が鳴ると、琉がボクを…、抱きに来る。
不意に、ピアノの音が耳に蘇り、身体が、ぞくっと震えた。
兎羅の言葉に、ボクは思わず、膝を擦り合せていた。
兎羅が、息を飲む音が……、聞こえた。
見えもしない瞳を、兎羅へと向ける。
兎羅からではない殺気が、背を撫ぜた。
感じる人影に、神経を向けた。
近づく人影から感じるのは、ただただ殺気のみ……だった。
荒い足音が聞こえ、ボクの手首が、ぐっと掴まれた。
「俺のもんに手ぇ出してんじゃねぇよ」
低く冷たい音が、部屋に響いた。
掴まれた感触も、響いた声も、琉のものだった。
琉の凄味の効いた低い声が、耳から脳を震わせ、ボクの身体を固まらせた。
不意に、目の前に人の気配を感じた。
ドゴッと鈍い音に続き、ずざっと滑る音がする。
兎羅が殴られ、吹き飛んだ音…。
違うっ。
兎羅とボクは、そんな関係じゃない。
思っても、ボクの口から声が放たれることは無かった。
怖くて縮こまってしまったボクの喉は、声を発しては、くれなかった。
ボクが、やっとの思いで出来たのは、手首を掴む琉の手を握り締め、首を振るうことだけだった。
チッと苛立たしげに立てられる、琉の舌打ちの音。
兎羅を殴り飛ばした手が、ボクの顎を、ぐっと掴み、顔を上げさせられる。
身体を起こし、駆け寄った兎羅が、顎を掴む琉の手首を掴んだ。
ふっと鼻を鳴らした琉は、嘲るように声を放った。
「わかったよ…、選ばせてやる」
ぼそりと呟いた琉から、にたりと笑う雰囲気を感じ取る。
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