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『バイバイ』
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琉に見つかった、あの日から、どのくらいの月日が流れたのかは、わからない。
久しぶりに、兎羅が1人でボクの所に来た。
兎羅の気配に、ベッドに蹲ったままで、少しだけ頭を持ち上げた。
身体を動かすことが、怠くて仕方なかった。
兎羅の手が柔らかくボクの頭に触れた。
その手は、するりと流れ、肩から腕、手へと移っていった。
兎羅に取られた手を開かされる。
兎羅の指が、文字を綴る。
『逃がしてあげる』
僕は、眉根を寄せる。
兎羅が何を言っているのか、わからなかった。
文字を認識できても、その意図が掴めなかった。
ボクの下唇に兎羅の親指が触れた。
くっと下げられ、ボクの口が開かされた。
コロコロっとカプセル状の何かが、口の中に落とされた。
ふわんっと触れたのは、濡れた兎羅の唇。
ちゅるっとボクの口の中に水らしき液体が流し込まれた。
流し込まれた液体を、ボクは素直に飲み込んだ。
水の流れに従うように、錠剤がボクの喉を滑り降りていった。
ふわふわとした、どこかに引き込まれるような感覚。
沈み行く意識の中で、兎羅の指が、ボクの掌に文字を書いた。
『バイバイ』
バイバイって……なに?
思っても口も手も動かなくて。
ボクは眠るように、意識を失った。
――ドンッ、ガンッ。
「起きろっ! 起きろ、ハロっ」
琉の叫ぶ声が、聞こえた……、気がした。
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