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先生と私
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私の先生というのは、それはそれはとても頑固な人である。そして癇癪持ちでなかなか曲者だ。だが世間一般では今の文壇を代表する売れっ子作家なのだ。世の中とは怖いものだと感じた瞬間だった。
私は何故か奥さんに言いつけられて先生の御付きにされてしまった。私の仕事は学業なのなあと奥さんの一言を恨んだ。これで私が試験に落ちてしまったら誰のせいにすればいいのだろうか。
先生は大学を首席で卒業した天才らしい。らしいなのは奥さんがそういうふうに言っていたからだ。確かに売れっ子作家になっているのだからそれなりに頭が良くないといけないと思う。私は誰よりも近くに居て先生が天才という事を実感出来ていない。
何故ならば先生はとても人使いが荒いからだ。天才ならばもう少し人に優しく出来るだろうと思うのだけれどそうでは無いらしい。奥さんに相談すれば、それは貴方があの人に好かれた証拠よと手放しに誉めてくれた。複雑な気分である。
先生は好きな女の子に悪戯をしてしまう男だと奥さんはにこやかに教えてくれた。その情報は要るのかと少し思った。
先生という人は、売れっ子作家なのでそれはたくさんの人を書斎に呼んだり語り合ったり評論したりしている。そして私は必ず来た人にニヤニヤ笑いながら話しかけられるのだった。今日もその日である。
「先生はさぞかし貴方を気に入っていらっしゃる様だ、宜しい事ですねえ。」
その人はニヤニヤと私を見ながら言った。
「先生のお気に入りの貴方、私の所に来てくれはしませんか。先生よりも貴方を愛でて差し上げましょう。」
その人が私の手を取って撫で回してきた時、その人が居なくなった。
隣にはとても不機嫌になった先生が私の手を強く強く握っていた、骨が軋むぐらいに。私は先生の万年筆しか握ったことの無いようなか弱い手でこんなにも強く握れるのに驚いた。先生も一人の男子だったんですね。
「先生、腕の骨が悲鳴をあげています。」
「テメエの腕なんぞ折れちめえ。」
フン、と不機嫌そうに先生は腕を離し踵を返して行った。腕を見ると真っ赤になっていた。
「自分の貞操ぐらい自分で護れよバカヤロウ。」
「ハア。」
私の返事にますます先生は不機嫌になった。バリバリと頭を掻いたと思えば唸りだした。すると私の腕を引き畳に倒すと先生は私の上に馬乗りになり言った。
「私以外の奴等にこんなふうにされるなよ。」
その時の先生の顔は忘れられない。
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