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図書室ではお静かに
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グラウンドから聞こえてくる運動部員たちの声。音楽室から漏れ聴こえてくる吹奏楽部が奏でるメロディー。
それらをBGMにペラリ、と1枚ページを捲る。
放課後にもなると、人が寄り付くことはほとんどない図書室。
1人、優雅にカウンター内に置かれた椅子に腰掛け趣味の読書を楽しむ。
誰にも邪魔されない、俺だけの空間。
静かすぎない、心地良い空間は度々訪れるようになった、一人の男に容易く壊された。
「よぉ、図書委員長。相変わらずここは利用者が少ねぇな。」
「…………ここは静かに本に親しむ空間だ。用が無いならさっさと出て行け。迷惑だ。」
ガラリ、と開いた戸の先にいたのはこの学園の風紀委員長。
風紀を取り締まる役員にも関わらず、着崩された制服、黒い髪から覗く耳にはいくつものピアス、どこからどう見ても不良にしか見えない男は、何故だかこの図書室によく訪れる。
「用ならあるぜ?何せここを利用してた生徒が、図書委員長に図書室を追い出されたって、俺に泣きついてきたんだ。追い出した理由を俺が直々に聞きに来てやったんだよ。」
ニヒルな笑みを浮かべながら図書室に足を踏み入れる。本に囲まれたこの空間に、恐ろしいほど似合わない。
溜息をつきながら、手に持っていた本に栞を挟み、閉じる。
「………追い出したことは事実だが、俺は間違ったことはしていない。」
「へぇ?」
「………壁に貼ってある紙に気付きもしないほどぺちゃくちゃと談笑を続ける生徒に注意を促しただけだ。」
『図書室では静かに』そう書かれた張り紙。
当たり前の事を出来ない輩に、読書を楽しむ時間を邪魔されるのは腹が立つ。
少し下がっていた眼鏡を人差し指で直し、席を立つ。
この男が来ると、大抵読書を楽しむどころではないのだ。
返却棚に入れられている本を数冊取り、元の場所に片付ける。
「ま、そんなこったろうと思ったがな。」
「…分かってたなら、態々ここにこなくても良かっただろう。風紀委員長はやはり暇なのか。」
「バッカお前。こう見えて俺だって忙しいんだよ。」
「ならさっさと自分の成すべきことをやれ。」
「めんどくせぇ。」
「………何でお前みたいなのが風紀委員長なんてやれてるんだ。」
「俺は優秀だからな。」
「……………」
「何とか言えよ。」
話を聞き流し、最後の1冊を片付ける。
すると、ポーンと軽やかな音色が聞こえてきた。放送を知らせる音だ。
『風紀委員長!!あんた今何処ほっつき歩いてんだ!!!今日は役員会議があるって言ってただろが!!!』
「………呼ばれてるぞ風紀委員長。」
「あー、そういや何かあるつってたなぁ。めんどくせぇ…。」
『後図書委員長!!!あんたも今日こそは会議に出てくださいよ!!本読んでて気づかなかったはもう通用しませんからね!!!』
ガチャン!
盛大に電源を切る音とポーンと放送を終える間抜けな音。静まり返る図書室。
「……………。」
「くっ…。ほら、お前も呼ばれてんぞ図書委員長様?」
「お前、本当は会議のこと覚えてただろ。」
「さぁなぁ?」
ニヤニヤして壁に凭れている男を睨み、舌を打つ。
「ま、早く行かねぇとあいつの説教が長引くだけだから仲良く2人で行こうぜ。何なら俺が抱えて連れてってや…って!」
「それ以上口を開くと殴るぞ。」
「殴った後に言うんじゃねぇよ。」
全く、この男と出会ってから本当に碌なことが無い。
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