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プロローグ
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まだ陽が明けない暗がりの朝。
手入れが施された古い道場で、剣道の胴着に身を包み、竹刀を持って向かい合う2人の姿があった。
………………。
しばらくの沈黙。
2人は微動せず、
ただお互いの動きを探り合っていた。
ーーーしかし、静かな空間は突然打ち破られる。
パシィィンッ!!
竹刀同士がぶつかり合い、鋭い音がこだまに響く。
2人のうちの1人が、相手の身体を狙って竹刀を振りかざしていた。
だがそれは難なく防がれる。
「っ!」
それを合図に、攻撃した者が連続的に竹刀を振るった。
ぶつかり合う竹刀の音。
素早く動く裸足によって、床が幾度となく音を立てた。
対立する両者。
竹刀が交わり、互いの顔が近くなる。
「……これが、貴方の本気ですか。」
攻撃を受け止めていた者がそう呟くと、交わった竹刀がどんどん攻撃を仕掛けた顔に近づいていく。
「っ!?」
「……駄目ですね、こんな力では。」
ーーー凜として強い、女性の声。
そう言った瞬間、その者は竹刀を弾き飛ばし、素早く足を前にだして一気に懐まで入り込む。
一瞬だった。
振りかざした竹刀が相手の面に直撃する。
思いの寄らない力によって、相手の身体が傾き、そして腰から床に転倒した。
空間を切り裂く空気の音。
目の前に向けられたのは、竹刀の先端。
剣を失い、座り込んだ者と
武器を持ち、狙いを定めて立ち尽くす者。
「………っ、……!」
「私の勝ちです。」
ーーーその勝敗は明らかだった。
地上から太陽が昇る。
柔らかな陽の光は次第に強くなり、古びた道場をまぶしく照らす。
明るくなる視界。
勝利を収めた者はその面を取って、頭に巻いていたタオルを外した。
ーーーその瞬間、解いたタオルから美しい黒髪が姿を表す。
艶やかで細長い糸は空気に触れ、やがて背中にパサリと流れ落ちた。
冷たく澄んだ赤紫の瞳は、どこか彷徨うように外へと視線を移す。
「……もう、朝か……。」
太陽の光で満ちた晴天に目を細めた。
黒髪の女性は、
手に持っていた竹刀を力強く握りしめる。
そしてしばらくの間、彼女は澄み切った青空をジッと見つめていた。
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