アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
なな。
-
*
龍彦は困ったように笑みを繕い、目線を下げて申し訳なさそうに呟いた。
「……ごめん、それだけは話せない。」
「……それは、なんで?」
「……これはある人との約束だから。」
「だから、すまない…。」と龍彦は兎代に頭を下げた。
「そうか……。」
ーーー再び静まり返る部屋。
すると兎代は何かを決めたように、いきなり自分の頬を叩いた。
パチンッと肌の弾ける音が、静かな空間にやたら大きく聞こえる。
「……よし!!」
それには龍彦も、伊月も驚いたように目をまん丸とさせていた。
「なに、してるの…兎代。」
「あ?何って、心を入れ替えてんだろ。」
「え?」
そう言うと、兎代は手を頭の後ろに持っていった。
そして体勢を変え、堂々と寛ぐ。
「俺、めんどくさい事って嫌いなんだよなぁ。うじうじするのって心が疲れるし。」
「…………。」
「初め聞いたときは、すげぇムカついたけど。でも俺がこの名を継がせたのには理由があるんだろ?
父さんはそこら辺のゲス野郎みたいに、人を利用して楽に金を稼ごうなんて考える人じゃない。」
「っ!!」
「父さんの心は全く読めねぇけど、父さんがどんな人なのかは知ってる。」
ニカッと兎代は歯を出して、無邪気に笑った。
「俺父さんの息子だぜ?何年一緒にいると思ってるんだよ。」
それを聞いて後ろにいる伊月が、嬉しそうに笑う。
一方龍彦は何も言わず、
驚いたように目の奥を光らせた。
頭の奥で、ある記憶がふと蘇る。
"アタシ、めんどくさいこと嫌いなんだよね"
白い記憶に掠める、深紅の髪。
"だからアンタに此処で死なれると困るわけ。分かる?"
ーーー思い出す、あの時の君と。
「………兎代。」
「あ?」
「父さん、今凄い感動してるんだけど……。抱き締めてもいい?」
「はぁ!?」
感動したようにキラキラとした目で兎代を見る龍彦。
そのワキワキとした手は、妙に気持ち悪い。
「き、キモイなその手!!てか中年のおっさんに抱きつかれても嬉しくねぇよ!!」
「まぁまぁ、恥ずかしがらずに。」
「伊月!!お前は黙ってろ!!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
74 / 148