アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
じゅうきゅう。
-
*
ーーーーすると、
キーーンコーーン、
カーーンコーーン
丁度よくチャイムが鳴った。
クラスの生徒がみな席を立ち、好きなところに行って騒がしくなる。
「おーーい、兎代!」
兎代の名前を呼びながら、山内が険しい顔で2人の元にやって来た。
「あ……、ども。こんにちは。」
隣にいる寧々を見て、一瞬顔を崩しデレながら挨拶をする。
「……??こんにちは。」
寧々も笑顔で挨拶すると、山内は血相変えて兎代に飛びかかってきた。
「グハッ!?」
『おいっ…、お前こんな可愛い子と仲良しなのかよ!羨ましい!付き合ってんのか?』
兎代の肩に腕を乗っけながら、山内は囁く。
『はぁっ!?んな訳ねぇだろ!!
ただの知り合いだよ……。』
『知り合い?』
『そうだよ……。』
そう言うと山内は安堵の息を吐いて、兎代の側から離れた。
「なんだ、良かったー。俺、てっきりお前に先越されたかと思ったよ……。」
「何の心配をしてんだお前は。」
ホッとした表情で胸を撫で下ろす山内。
そのあと彼は、何気なく後ろの方へと目を向けた。
「……あれ?そういや楓さんと熱月さんは?」
「「え??」」
山内の声に兎代と寧々が同時に反応する。
伊月達の席へ顔を向けると、そこには誰もいなかった。
「本当だ、いない…。あいつらどこ行った?」
空白の席を見ながら、
兎代と山内は同時に首を傾げる。
だが寧々だけは違った。
伊月と春真がいないと知り、彼女は顔を青くして「まさか……。」と呟く。
「兎代さん!ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど!」
「あ?何だよいきなり。」
「いいから!
すみません、山内さんも手伝っていただけますか?」
「おう!寧々ちゃんのためなら、お安い御用だぜ!」
こうして男2人は寧々の言葉に従い、素直に行動へと移した。
ーーーーー
ーーー
「……で、話って何?熱月さん。
俺早く教室に戻りたいんだけど。」
「……………。」
人気のない空き教室。
にこやかな笑顔で伊月は春真を見る。
幼さが残るように計算されたその表情は、普通に見たら学生のように見えてしまうだろう。
「……伊月さん。私と勝負してください。」
冷たく放たれる彼女の言葉に対して、伊月はスマホを見ながら聞いている。
その態度は明らかに、
要求を真剣に聞く態度ではない。
「ふーーん、勝負ね。一体何のための勝負かな?」
「………………。」
すると、目の前にいたはずの春真の姿が消えた。
ーーーー後ろに人の気配を感じる。
気づくと伊月の首筋には、鋭く研がれた刃が当てられていた。
「こうゆう意味の、勝負です。」
太陽の光に反射して、うすく塗装された黒のナイフが光る。
伊月はそれを目で追いつつ、何も動揺することなく喋り続けた。
「なるほど。
……で、それには何か理由でもあるのかな?」
「理由などありません。ただ私は、貴方と腕試しがしてみたい。それだけの話です…。」
「へぇ……。」
「今まで私は、自分以外の月華に会ったことがない。
ましてや今、その中でも特に"優秀"と謳われる貴方が目の前にいる。
となれば……戦わずにはいられないでしょう?」
「そう?俺は別に思わないけど。
……それに、そんなに大した奴じゃないよ。俺は。」
伊月は時間を確認して、ナイフの刃に手を添える。
「話は終わり?
俺、そろそろ教室に戻りたいなぁ……。」
「私と戦うと約束してくれるなら、すぐにでも離します。」
「これも見ても?」
伊月はスマホの画面を熱月に向けた。
そこには沢山の生徒に囲まれている寧々。
その画像を見て、熱月は眉を顰める。
「君のご主人、ものすごく困っている様だけど。助けなくていいのかな。」
「……………。」
「彼女に何かあったらどうする?
もし襲われでもしたら、君が責任を取るんだよ。
早く行って助けてあげなきゃ。」
「………チッ。」
彼女は大きく舌打ちをすると、伊月から身体を離した。
「これで終わりだと思わないでください。
………貴方が相手してくれるまで、私は絶対に諦めない。」
彼女はそう言い残すと、空き教室を後にして戻っていった。
熱月が消えた後、
伊月は面倒くさそうに前髪を崩す。
「……はぁ……。若いなぁアイツ……。」
冷めた割には、どこか熱い部分があるし。
戦う能力はあるが、
精神的面を含めるとまだまだ幼い。
「今回は寧々様に感謝かな。これが無かったら、アイツ勝負するまで引いてくれなかっただろうし。」
伊月はスマホに送られてきた画像を見た。
大きく溜息を吐いて、彼は幼い顔から大人の顔へと変化させる。
それにしても、あの状態では彼女は危険だ。
(完全にあれは戦いに酔っている。彼女は負けた経験がない分、月華の力を驕っているんだ。)
「……あのままだといずれ、面倒なことになる。」
警戒するように吐き出された重い言葉。
彼は金髪から覗く鋭い眼差しを、そのまま横にスライドさせた。
早くアイツの興味を、
俺からあの子に逸らさないと。
瞳を閉じて、彼は一度深く深呼吸をする。
「……よし。」
そして伊月は元の顔に戻すと、そのまま空き教室を後にした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
86 / 148