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にじゅうさん。
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*
一方春真はそんな事に一切気づかず、
結局伊月達の話の内容が分からないまま帰ってきた。
ーーーだがそこには寧々の姿がない。
「………寧々様……?」
閉まっているはずのトイレの扉が空いている。
「っ!?」
それを見て目を見開いた春真が、焦ったようにトイレの外へと出た。
「寧々様!!寧々様っ!!!」
大声で叫びながら公園中を探しても、彼女の姿は見当たらない。
春真は頬に、一筋の汗が流れ落ちた。
「どうしたっ…!熱月…!」
その大声に気がついて、兎代達が慌てて公園へと戻ってくる。
「寧々様が……、寧々様がいない!!」
焦ったように話す熱月の言葉を聞いて、2人は目を大きく見開いた。
「それ……どうゆうことだよ!おいっ!!
お前見てたんじゃねぇのかよ!?」
「……っ、それは……。」
曖昧な表情になりながら、春真は2人から目を逸らす。
伊月はそんな彼女を見ながら、冷静に言葉を発した。
「とにかく今はそんなことを言っている場合じゃありません。早く寧々様を見つけなければ。」
「そ、そうだよな……。」
「それぞれ分かれて探しましょう。その方が見つかる可能性が増えます。
若様は危険なので俺と一緒に来てください。」
「分かった…!」
3人は公園の外へ出て、
それぞれ別の道へと走り出した。
ーーーーー
ーーー
「はぁっ……はぁ……!」
寧々はその後、数人の人間から逃れるために必死に走っていた。
明らかに感じる別の気配。
それは一般人とは違う、異様なものだった。
心の中では何度も、春真の名前を呼び続ける。
普段歩き慣れていない、知らない街。
無我夢中で走っていれば、急に背後にあった気配を一切感じなくなった。
「………もう、平気………?」
薄暗い路地裏。
後ろを見れば、そこには誰もいない。
誰もいなくなった道を見て、ホッと寧々は息を吐く。
「そうだ……スマホ……!」
安心してから彼女は、ポケットの中に携帯があるんじゃないかと気づいた。
しかし、スカートのポケットは空っぽ。
「……そうか……。私、トイレに行く前にスマホを春真に預けたままだったんだ……。」
どうしよう……、と寧々は顔を真っ青にして指を唇に当てる。
すると路地裏の暗がりの方から、犬の呻く声が聞こえた。
その威嚇する低い声に、寧々はビクッと身体が跳ねる。
「う、嘘………。まさか…そんな事って……。」
寧々は暗がりから現れた野犬、数匹を見てスゥッと血の気が引いた。
ガタガタと震えが止まらない。
暗闇から光らせたその瞳に、
寧々は恐怖で動けなかった。
普段見ることはない獰猛な犬達が、皆牙を見せて威嚇している。
(に…逃げなきゃ駄目だ……。
でも、怖くて身体が動かない……っ……。)
昔から染み付いているその恐怖によって、寧々は動けなかった。
やっとの思いで寧々が1歩足を引く。
しかしそれを合図に、犬達は一斉に走り出した。
鋭い牙がある口を大きく開けて、寧々に飛びかかる。
「ひっ……!?」
ーーーーその瞬間、
彼女の悲痛の叫びが路地裏に響き渡った。
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