アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
にじゅうなな。
-
*
ーーーー
ーー
楓と交わって意識を失った後、
俺はある夢を見た。
『兎代、紹介するよ。』
目の前にあるのは、あの日の残像。
頭の中で響くのは、ジリジリと煩い蝉の声。
あの時の彼は、今の彼と想像がつかないくらい怖い顔をしていた。
初めて彼を見たのは、俺がまだ小学生の時で、彼が高校生の時だった。
『彼の名前は伊月 楓くん。
よく家に来てくれる着物のおじさんがいただろう?彼はその人…伊月 扇堂(いづき せんどう)さんの息子なんだ。』
頭を撫でてくれる父さんの感触。
俺を見ようとしない彼を、俺は不思議そうにしながらジッと見つめていた。
まるで興味がないと、嫌悪感たっぷりな態度を取っていた彼がまだ物凄く怖かったのを覚えてる。
ーーーでも、何故か目が離せなかった。
上質そうで綺麗な制服を着ているのに、彼の存在自体はボロボロのように見えた。
拳には沢山の擦り傷や、僅かに捲れた薄い皮膚。
半袖から見える腕には無数の痣と、浅い切り傷。
それがとても痛々しくて、俺は思わず自分の手をギュッと握った。
そして彼の瞳を見た瞬間、俺は愕然とした。
『それでね、彼らの家は代々僕たちの家を……って……兎代っ!?』
『……っ……。』
気付けば俺はボロボロと大量の涙を流していた。
その時、初めて彼が俺に視線を向けてくれたっけ。
無意識の内に足が動いていて、思わず彼の身体に飛びついた。
『ちょっ……、お前…何っ…!』
最初に彼の発した言葉がコレだった。
イラついたような、焦っているような声。
『……いたい……。』
『!!』
『こころが……、ものすごく…いたい……っ……。』
顔を見上げて、俺は彼と初めて視線を交えた。
その瞬間、彼が大きく目を見開いて
俺の身体からはまるで電流が流れたかのように痺れた。
"ねぇ、なんでキミは……そんな目をしているの……?"
俺が彼の瞳を見た時、それは絶望に近いような目をしていた。
その瞳には何も映ってなくて、黒くドロドロとしたものがあって、とても濁っていた。
あんな目をした奴、今までに見たことがなかった。
でも俺の視線と交わって、彼の瞳からは僅かに光が灯る。
そして俺の身体を抱き上げて、ギュッと強く抱きしめてくれた。
夏だったからか、汗でしっとりとした肌と濡れたシャツの感触。
俺を抱きしめる彼の肩は僅かに震えていて、それが何だったのか、俺には全然わからなかった。
ーーーこれが、俺と楓の出逢い。
ーーーー
ーー
「ん……。」
カーテンから差し込む光で、俺は目を覚ます。
ベタベタとした身体は綺麗になっていて、グチョグチョに濡れたシーツはサラサラになっていた。
俺の瞳に映ったのは、金色。
「……あれ……、起こしちゃいました……?」
俺の髪を梳くように撫でていた楓…いや、伊月がニッコリと笑った。
俺と同じで彼も裸だった。羽毛布団の中で、お互い向かい合うような形で寝ていたようだ。
光で反射した金髪は、キラキラと煌めいていて、とても綺麗だった。
俺の髪を触る手は、古傷が目立たなくなっていて、白くきめ細やかな肌をしている。
まるで宝石のように透き通った瞳が、俺の視線を捉えた。
「おはようございます、若様。」
優しく細められた目を見て、俺はなぜか泣きそうになった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 148