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【オリジナル/R18】この夜が終わる前に。【幼馴染】
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「なあ、今度の警備の変装、お前どっちがいいよ」
これとこれ。
榊が持ってきた箱の中身を見て、覚流は固まった。
箱の中から出したのは、アオザイというベトナムの民族衣装。
薄い緑色と桃色の二枚が入っていた。
しかしそれはどこをどう見ても女性用。ふとした疑問の声を上げた。
「あのね?……敏樹? 言っとくけど俺、男だよ?」
にっこりと微笑んで、真実を確認させるように告げる。
「ああ。もちろんわかってるさ。俺のかわいい恋人は男だからな」
榊の恥ずかしげもなく口にした言葉に、思わず顔を赤くする。
俯きながら上目遣いで榊の顔をちらりと見た。
「……これ、アオザイだよね? 女性用、だよね……?」
「ああ。アオザイだな。似合うぞぉう?」
満面の笑みを浮かべる榊に、心の底から嫌そうな顔をして一言断言する。
「……やだ……」
「わがままいうな。男女同伴の会場なんだ。それに、今回のミッションは【執行官】しか入れねえんだから諦めて着てみろ」
絶対似合うって。
榊の言葉に仕方なく桃色のアオザイを手渡されて、仕方なくそれを受け取る。
「男女同伴なら弥生ちゃんだってかさねちゃんだっているじゃん……」
「あいつらは【執行官】のサポート。【執行官】はお前と千明だ。ちゃんとこれもつけろよ?」
「嫌……」
「じゃあお前、千明の女装見てえのか……? 女には見えねえぞ? あのタッパじゃ」
「……そ、それは……そうだけど……」
「だろ? んじゃあこれ着てみ?」
そう言って渡されたのは女性用下着と、水のような物の入ったパックが二つ。
「……これ、は?」
「パット。……これをだ」
上半身の服を剥くように脱がせて、手慣れた様子で上下の下着を着けさせる。そして、人肌に温められているそのパックをそれぞれ納まるべき所へ静かに入れた。
「ちょ、待ってって。……なんか、変だよ……」
傷だらけの身体に女性用の下着がミスマッチな光景だが、榊はそんなことは気にしない。
「平気平気。で、これ上から被ってみろ」
ぴらり、とアオザイを両手で持ち上げて見せる。
「どうしても……?」
「どうしても。ほら着てみろよ」
「……や……」
「じゃ、お前今夜そのままだぞ?」
俺はいいけどな、と楽しそうに榊に囁かれて何も言えなくなってしまう。
「わかったよ……。着るよ……」
今すぐにでも恥ずかしさで倒れてしまいそうな顔をしながら、榊からアオザイを受け取って袖を通す。着替えている間の覚流の顔は、羞恥にどんどん顔が赤くなっていく。
「で、ズボン。それ終わったらヅラもあるからな? あと眼鏡も替える。メイクもするからな?」
「カツラ!?」
「ああ。頭短いまんまだと男だってバレちまうだろ? ……おお……、何だよお前……」
目の前に現れたアオザイを着た覚流に、榊は嬉しそうに笑みを浮かべる。
作ったものだが胸もあり、身体の線も女性らしいそれになっている。
「すっげぇ似合うじゃねえか……」
抱きしめたくなったが、それを敢えてぐっと堪える。
「やめてよ……。ズボン貸して……」
「ん。ほら」
ズボンを手にしてそれをはく。
「……どう? ……おかしいよね?」
榊の目の前でくるりと回ってみせる。長く取られた前の布がひらりと舞うのを見て、榊は心拍を上げてしまう。
(今すぐ抱いちまいてえ……。これ以上持たねえから早くしねえとマズイっ!)
しかし、まだ準備は整っていない。
あえて無理やりはやる気持ちを抑えつけて、覚流の女装を完成させることにした。
「覚流、こっち向け」
そういって榊はウィッグ用のネットを覚流に付けて、黒髪のロングウィッグを被せる。後ろ髪を手早くアップスタイルに整えてから、前髪をこれからするメイクに邪魔にならないようにヘアピンで留める。
「お前は肌元から綺麗だからナチュラルメイクがいいよな」
化粧水をコットンにとって軽く肌の汚れを落とす様に叩いてから、もう一度化粧水を手に取って覚流の顔になじませる。
それから手慣れた様子でメイクをしていく榊に何も言えないまま、時間だけが過ぎていく。
「動くなよ。口紅は久しぶりなんだ」
そう言って、塗ったファンデーションが落ちないようにパフを右手の薬指と小指にひっかけるようにしてから紅筆を持って、覚流の唇に邪魔にならないくらいのほのかに赤いリップグロスを塗っていく。
それのグロスはキスをしても落ちにくいというもの。
濡れたような仕上がりになった覚流の唇に、今すぐキスをしたくなる。
眉毛を少しいじってから、眼鏡をアオザイのイメージに合った丸いレンズのものに変える。
そして、最後にアップスタイルの髪に白い花のモチーフの飾りをつけて、榊の手は止まった。
「……かーんせーい……。姿見、見てみろよ」
榊は覚流を連れてリビングの片隅に置いてある木製フレームの姿見の前に覚流を連れていく。
恐る恐るその前に立って、鏡を見る。
「……え? えと……、敏樹……、これ……」
「な? 似合うだろ?」
笑う榊に、覚流は困ったような顔をする。
鏡の中にいるのは、覚流だと言われなければわからないアオザイ姿の女性がいたのだ。
「これ、俺なの?」
「ああ。……なあ、覚流?」
覚流は鏡の中の自分を見ているうちに後ろから突然榊に抱きとめられ、顔を赤くして身動きが取れなくなってしまう。
「今日は違うことしてみようぜ?」
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