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サンタさん
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雄大はつい引っ張られるようにサンタと共に顔を上げてしまった。
「……」
黒いコートに少しゆるめのウエーブのかかった黒髪。長身で鼻筋の通った仕事帰りの様な男性が立っていた。ネイビーに白のラインが入ったマフラーを巻き、難しい顔でリアルサンタクッションを見つめていた。
(何なんだろう…)
その険しい空気に雄大はすすすっとその場を離れた。
「ゆーちゃん、レジ交代だよ。」
「わぁ!!」
「何びっくりしてんの?」
バイトの女子大生に笑われながら、レジに入った。
「いらっしゃいませ〜〜。」
閉店まであと30分。
店に立ち寄りのは冷やかしばかりの時間。
ただ、
(まだ見てる…)
先ほどの男性客は何を探しているのか、ぐるぐる店内を周り、何かを持っては考え事をして、また移動して、戻ってを繰り返していた。
(あっ…どっか行った…)
しばらくして、男性は店から離れて行った。
(何だったんだ?)
雄大は首をひねるしかなかった。
閉店、10分前。
蛍の光が流れ始め、客たちは吸い寄せられるように出口へと向かって行っていた。
雄大もレジから離れ、出来るところの片付けを始めていた。
(もうちょっと(^O^))
ルンルンと商品整理をしていた時、スッと店内に人が入ってきた。
「い、いらっしゃいませ!」
反射的に声が出た。
(ったく、もう閉まるって…)
見ると先ほどの黒いコートの男性が再び、食器コーナーで商品を見ていた。
「……。」
その真剣な横顔。焦っているのか、頬を染めて、息を切らしていた。
(何かいったほうがいいのかな?)
雄大が一歩、踏み出した時、
『当館は間もなく閉館となります。本日はご来店、誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。』
男性はハッとアナウンスの鳴る天井を見上げ、迷う様にキョロキョロしたが、蛍の光に押される様に店を出て行ってしまった。
『当館は間もなく閉館…』
(何を見てたんだろう?)
雄大は男性が立っていた場所に立ち、消えていった後を見つめた。
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