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クリスマスの時間
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ジングルベル♪ジングルベル♪鈴が鳴る〜♪
「鈴なんて鳴らねぇよ。」
サンタの服を着させられた雄大はブツブツ言いながら、クリスマス包装を片付けていた。
「プレゼント包装も昨日が最高潮だったね〜。」
トナカイの衣装を着た店長がズルズルと白いゴミ袋を引きずってやってきた。
「プレゼント包装も明日までかな〜〜。」
「明日から正月用品に棚替えしますか?」
「うん。ちょっとバックヤード見てくる。」
「えっ?僕一人になるんですけど…」
「大丈夫だよ。もうすぐ閉店時間だし、今夜は客は来ないよ〜〜みんな楽しいクリスマスパーティーさぁ〜♩」
トナカイはここ連日の長時間勤務のせいか、躁鬱状態でゴミ袋を引きずって、バックヤードへ向かった。
「大丈夫か?店長…」
トナカイの後ろ姿を見ながら、店内を見渡すと確かに客はさっきから全くいない。
(昼間は多かったけど…)
通りがかりのカップルが通路からキャアキャア言っているのばかり目に入るが、中に入ってくる客はほぼいなかった。
(もう片付けちゃおう☆)
雄大は着なれない衣装を引きずりながら、レジから離れ、片付けを始めた。
「ありがとう!大事にするね〜〜。」
目の前をカップルが寄り添いながら歩いていく。女の子は自分の指を大事そうに触っていた。
(あぁ…)
2人の後ろ姿を見ながら、雄大は加藤の事が頭をよぎった。
(プレゼント…彼女は気に入ってくれたかな?)
喜んでくれればいいけどと思いつつ、何かがチクチクして、素直にそうは思えない。
(痛って。。)
雄大は胸を押さえた。
リーーーン♪
レジを呼ぶ鈴の音がした。
「やべっ!」
雄大は急いでレジへ向かった。
「お待たせしました。」
走った時に帽子がズレて、前があまり見えないまま、レジに入った。
急いで前に置かれたワイングラスを手に取った。
「お預かりします。」
「プレゼント包装、お願いできますか?」
(えっ…?)
ここ最近、聞き覚えのある声。柔らかい物の言い方。
雄大はズレた帽子を押さえながら、顔を上げた。
そこにはニコニコと笑っている黒いコートの加藤が立っていた。
「何…で…?」
「リボンの色はグリーンにして下さい。初めて喋った日にその人がグリーンのセーター着ていたんで。」
「グリーン…?」
「あとその人にこの花をプレゼントします。」
加藤は赤い薔薇の詰まった花束を雄大の前に出してきた。
「あっ…えっ?あっ!わかった!これからこれを俺が彼女に渡すっていうサプライズすればいいの?」
「彼女とは別れた。」
「えっ…?」
「てか振られたんだ!俺といてもつまんないって。」
「えっ!そんな勿体無い!」
雄大はそう言って慌てて口を手に当てた。
加藤はそんな雄大を見て、ニコっと笑った。
「俺も彼女の事、知らない事も知ろうともしなかったのも悪かったんだ。それに俺には彼女より、もっと知りたい人が出来たから…俺も別れるつもりだったんだ。」
「別れる…つもり…?」
加藤は薔薇の花束を雄大に差し出した。
「このお店に初めて入った時、その人は大事そうにサンタのクッションを並べてた。それを見た時、ここのお店はいいお店なんだって思った。それからその人が話しかけてくれた。なんていうか….嬉しかったんだ。」
加藤は恥ずかしいそうに目を逸らした。
「その人はニコニコしるのにすぐに顔に出るとこもわかりやすくて、可愛くて仕方なかった。だからお店に来ると疲れも飛んで、どうしても口元が緩んじゃう自分がいたんだ。」
(あっ…)
加藤のニコニコ顔を思い出した。
「彼女の事を考えてプレゼント選ぶのは途中なんか嫌になっちゃったけど、その人と話すのはとても楽しかった。それに…」
加藤は背を伸ばし、じっと雄大を見つめた。
「椿くんのことはもっと知りたいと思った。受け取ってくれる?」
雄大は顔が熱くなるのを感じながら、「あわわっ。」と言って、差し出された花束を受け取った。
それを見た加藤はくっと笑った。
「ワイン、一応いいヤツ選んでみたんだ。飲みに来てくれない?花瓶も飾ってるから。」
雄大は頭がぐるぐるとした感じになり、言葉が出でこなかった。
「無理かな?」
真剣な加藤の目が覗き込んできた。
「む、む、無理じゃないです!」
加藤はにっこりと笑った。
「サンタさんに感謝しなきゃ。こんなに可愛いサンタさんをプレゼントしたくれたんだから。」
雄大は花束に顔を隠しなが、上目遣いで加藤を見た。
(クリスマスの奇跡…かな?)
蛍の光が流れ始めた。
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