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君に出会う
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ずっと忘れかけていた過去を思い出し、卓斗は少し俯きながら、言葉を紡いでいく。
「…小さい頃、いつも僕の面倒を見てくれていた人がいたんです。泣き虫な僕をいつも引っ張っていってくれて、すごくしっかりした人でした。でも、そんな人が…一度だけ辛そうな顔をしていたのを見ちゃったんです」
そんな話をしていると、卓斗の頭の中には過去のその場面が鮮明に浮かんできた。
「僕…ビックリしちゃって…そのまま逃げたんです。あんな顔をしたあの人を見たくなかった。…どうしてあんなに辛そうだったのかはわかりません。でも、何も出来ずに逃げた自分が凄く悔しい。…だから、そんな顔をしてる人を…もう見たくないんです」
全てを話し終えた卓斗の瞳からは次々と涙が零れ落ちる。
その時の事を後悔しても、今更遅い。
そんな事はわかり切って居るからこそか、もう同じ後悔なんてしたくなかった。
そんな事を考えながら、こぼれ落ちる涙を無造作に手の甲で拭っていくが、そんな行動とは裏腹に涙は止まろうとしない。
「剣咲君…」
目の前で泣いている卓斗を見つめながら、悠は胸が締め付けられるような感覚に陥ってしまう。
そして、想いに掻き立てられるかのように、気づけば卓斗を己の腕に抱き締めていた。
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