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れいんぼう ろぅざ。
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「レインボーローズって手に入りますか?」
「……花束ですか?少し時間がかかるかもしれないですけど……急ぎ、ですか?」
「来週には欲しいから、宜しくね」
「……はいわかりました……?」
祖父の月命日に贈り物の花を必ず買いにくる俺の恋人。
恋仲になってからは、自分の影響か月に一度の来店だけでなく会社に飾ったら喜ばれたから、とか、友人の奥さんにプレゼントしたら喜ばれたから、とか。
何かと理由を付けて花をプレゼントする人になっていた。
いつもはその全てが“お任せ”なのに、今回に限って珍しく花を指名してきた。
しかもそれがレインボーローズだなんて、どこから情報を得てきたのだろう。
手に入れるのは難しくないけれど、花に関して無知な恋人が虹色に開発された薔薇の名を知っている筈がない。
と、なると。
「誰にあげるものなんだよ?…」
お互い、いい歳だし干渉し合うのも違う。会社とかでの付き合いとかもあるだろうし、喜ばれたからという楽しみを覚えた彼のことだし、これが誰かに贈るものなのは間違いない。
彼の職場は割と仲が良いと聞いているから、もしかしたらその職場の女の子の誕生日とか結婚のお祝いとかかもしれない。
色々と頭を巡らせて、腑に落ちないながらも彼の願いを叶えてあげたいこの性分が勝り、同業者である己の祖父に虹色の薔薇の買い付けを頼んだ。
来週って…ちゃんとデートの約束忘れてないよね…あ、ダメだ、あの人仕事はきっちりこなすのに自分の事となると忘れっぽいから、後でメールをしておこう。
お互いの気持ちが通じ合ってから何度かデートを重ね、年明けから付き合い始めた俺たちにとって初めてのイベント。
それがバレンタインだなんて、これがまたなんとも言えないところで。
何故って、俺も彼も甘いものが苦手でチョコレートとかお互い本当に食べないから正直口にしているところなんて見たこともない。
それでも何か記念というかちょっとしたことをしたいと考え抜いた俺は、家に招いて飯を作る細やかなデートプランをプレゼントとすることにした訳で。
彼は色々と疎そうだから、まぁ、内容は普通に日頃の感謝を込めてってことにするつもりなんだけどね。
きっとこんなに楽しみにしてるだなんて、知らないだろうな。
こうして俺は有難い事に忙しい仕事へと明け暮れて、日々バレンタイン当日へと期待と想いを馳せていた。
とは言っても当日は金曜日、うちの仕事としても彼の仕事としても慌ただしい日。
社会人の悲しい性はこういった時に現れるもので、俺は自営だけれどまだまだ駆け出しだから大事な日とは言えど蔑ろには出来ないし、彼もそれなりに重役なので尚更負担は掛けたくはない。
ともなれば、自ずと集合時間は遅めの23時となってしまう訳だ。
俺の家に来てもらって、予め仕込んでおいたものを温めて腹ペコ男ふたりで沢山食べて、彼は休みを取れたらしいのでそのままゆっくりしてもらう。俺もその日は妹に仕入れを頼んだから遅出で済む。
二人で無理に詰めた初イベントは、始まりは遅くても、いつもよりゆっくり一緒にいられる予定。
それだけで、幸せ、十分すぎるほどに幸せ。
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