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後日談
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※※※※
「えっ!?森澤ってゲイなのか?」
瑛太のアパートへ帰る道中、二人はコンビニに寄っていた。
紅の大きな声と“ゲイ”という単語に店員の男がギョッとした顔でこちらを見てきたので紅は気まずそうに声を潜める。
「彼女の入れ替わりが激しいって有名じゃんか…」
紅とは対称的に瑛太は落ち着いている。
淡々としながら片手に持ったオレンジ色の買い物カゴに何かをポイポイと入れていた。
「大方ゲイを隠れ蓑にするために自分で吹聴していたんじゃないスか。」
「え、でも…」
「あの人の性格、女癖激しいように見えないですよ」
「……確かに。」
『女なんて興味ない。紅がいい』
目の据わった森澤が確かにそう言っていたので瑛太の言葉も合点がいく。
「だから俺が気をつけるように言ったのにアンタは気にせず飲み会に行ってるし森澤さんにも唇を赦してるし…」
「言っとくけどなぁ!あれは不可抗力ってやつだろ!!」
あんな事故のようなキスをいちいちカウントされて責められたらキリがない。
ムッとしながら言い返すと瑛太の手がふわりと紅の顔を包み親指で唇をなぞった。
「それでも…アンタの唇を知っているのは俺だけで十分だ。」
こんなの反則だ。
そんなに悔しそうに言われたらこちらが折れるしかないじゃないか。
「……悪かったよ」
何となくバツが悪く感じ、ふと下を向くと瑛太の持つカゴの中身が見えた。
「バッ…バカ!何入れてんだよ!!」
それはコンドームの箱の山。
棚にある在庫をごっそりカゴに入れていたようだ。
ただでさえ、先程のゲイ発言で店員にちらちらと見られているのにこのカゴをレジに持って行ってはあからさまではないか。
「俺の家にもうないですよ。むしろ足りないくらいですし」
「どんだけヤるつもりだ!!」
さらりととんでもないことを言ってのける瑛太にツッコミを入れつつ紅は逃げるように雑誌コーナーへ移動した。
瑛太は渋々四角い箱を棚に戻しているようだ。
「おっジャンプ出てるじゃんか」
棚に並べられた漫画雑誌を手に取ると後から来た瑛太のカゴに入れる。
カゴの中にコンドームの箱が一箱入っていたが、まぁいいかと見ないフリをした。
紅だって瑛太と肌を合わせるのはやぶさかではない。
それこそご無沙汰なのだから。
今宵の情事を思い火照る身体に気付かれないようにそっと熱い息を吐く。
「そういや瑛太もジャンプ買ってたよな?何の漫画好きな訳?」
普段小難しい本を涼しい顔をして読んでいる瑛太の家に漫画があるのが意外だったので紅もよく覚えていた。
漫画を読んでコイツも大笑いしたり涙ぐんだりするのだろうか。
ふと沸き上がった疑問を訊ねてみると返ってきたのは意外な言葉であった。
「ああ…別に。俺が読む訳じゃないし」
「はぁ?じゃあ誰に…」
“誰に読ませるために買っていたのか”
それは、答えを聞くまでもない。
愛されていたじゃないか、それはもう疑う余地のないくらい。
「……何にやけてるんですか?気味が悪いんですけど」
「うるせぇ」
赤い顔を隠しながら精算をし、コンビニを出た紅の後に瑛太が続く。
自然と歩を緩め瑛太が隣に立つのを待つ。
自分の手が大きな手のひらに包まれるのを感じながら紅は応えるように握り返す。
すれ違ってしまってもちゃんとこの手を離さなければ、何度でもやり直せる筈だ。
この手の中にはそれがあるから。
☆end☆
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