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嫉妬と書いてジェラシーと読む
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徐に瑛太がジーンズのポケットからキーケースを取りだしカチャカチャと何かを探る。
「紅さん、手ェ出して」
瑛太が丸めた拳を紅の前に出したので素直に手のひらで受け止める。
チャリ、
手のひらには金属製の冷たい感触。
開くと鍵がちょこんと収まっていた。
鍵には鈴のストラップがついていて、手の中で転がすと微かに鳴った。
「…何時に帰れるかわかんねーぞ?」
「いいですよ。俺が勝手に待ってるんで。」
なにくわぬ顔で受け取ったが合鍵なんて初めて渡された。
“アンタは特別だ”
そう言われているようでこそばゆい気持ちになる。
自然と弛む頬をキュッと引き締め地面に視線を落とす。
「くれぐれもお持ち帰りされないように気をつけてください」
「はぁっ?ただのバイトの飲み会だっつーの!!」
「……紅さんは自覚なさすぎだから心配です。とにかく気をつけてください。特に男に」
「………」
過保護なくらい念を押されたが自分をそんな目で見るのは瑛太くらいだと紅は思う。しかし、ここで何か言ってはまた堂々巡りだ。
ポケットに突っ込んだ鍵にそっと触れる。
付き合い始めてしみじみ思うが、瑛太はやはり『優良物件』だ。
街を歩けばすれ違う女性は必ず振り返るほどの容姿。加えて羨ましいくらいの足の長さと180を優に越す高身長。
振る舞う手料理も歴代の彼女よりも美味いくらいだし、紅が入浴している間にワイシャツやスーツにアイロンをかけてくれるオカンぶりも見せる。
しかも夜は夜で甘い言葉と巧みな愛撫で思考も身体もトロトロに溶かされる。
流されているのかもしれない。
しかし、こんなに愛情を注がれて悪い気はしないのも事実だ。
こんなに居心地がいい相手は初めてだ。
確実に瑛太に惹かれている紅であったが、それが果たして恋なのかはいまいち確証が持てない。
恋が芽生えるより先に恋人同士になってしまったので仕方がない話なのかもしれないが。
自分の中の曖昧な気持ちに内心ため息を吐きながら居酒屋の暖簾を潜る紅であった。
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