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4.本心5
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だけど、もうこの想いを伝えることはない。僕の中で、静かに押し殺すんだ。
深く息を吸って、吐き出す。悲しみは吐き出せないようだった。身体の中の空気と一緒に、僕も変わってしまえたらいいのに。
「浅羽、ありがとう……。俺自身の本心を気づかせてくれて……」
水沢さんが僕に腕を伸ばす。その細くも逞しい腕に包まれたいと、何度願ったことだろう。このまま身を任せていれば、その願いは叶う。それでも、僕は僕の決意を裏切るわけにはいかないんだ。
ーー今すぐに変われないのなら、せめて、生まれ変わった自分を演じよう。そうしていつか、本当に生まれ変わった自分になる。
僕は水沢さんの腕を避けた。
水沢さんが少し傷ついた顔をした。罪悪感が胸を刺すけど、流されるわけにはいかない。
「駄目ですよ。僕は今から、ただの水沢さんの後輩です。水沢さんを純粋に慕う下級生です。……だから、これ以上、僕の未練を増やさないでください……」
「そうか、悪かった」
水沢さんが僕に微笑む。僕の気持ちは分かってくれたようだ。
それならもう、長居する理由はない。
「それじゃ、僕は部屋に戻ります。水沢さん、幸せでいてください。では、失礼しました」
僕は、半年間通った水沢さんの部屋を出た。
「浅羽もな」
ドアを閉める瞬間、たった一言、そう聞こえてきた。
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