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告白 sideR
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ジャングルジムから落ちたという息子が、頭を痛がった理由は
風邪で熱が出ていたからだった。
「人騒がせな!」
検査室の前で、思わずそう叫んでしまった。
「小さいお子さんの場合、こういう混同って、たまにあるんですよねー。」
ブサメン看護師くんが、笑いながらそんなことを言ったけど
取るものも取り敢えず、走らされた身としては、腹が立つやら、情けないやらで、どっと疲れが出た。
「ねぇ、ママ。ぼくもう1回、寝てもいい?」
赤い顔の悠真が訊いた。
「えっ?良いんかしら?」
退院するつもりで片付けかけたベッドを見て、私がそう言うと
「お母さんもお疲れでしょうから。少し休んで行かれても良いですよ。」
ベテランらしい看護師さんが優しくそう言ってくれた。
「ほな、お言葉に甘えてちょっとだけ…」
夫が来るまで、私も横にならせて貰うことにした。
5分もしない内に、夫がやって来た。
「ちょっと、ええか?」
「なに?」
隣の悠真を見たら、グッスリだった。
「ちょっとだけなら…」
普通の談話室ではない、服薬・栄養指導室と書かれたドアの中へ身振りで入れという。
「なんで、こんなとこ。大丈夫なん?」
「看護師さんに断ったから、大丈夫や。」
いつになく手回しがいい。コレは何かある…ピンときた。
椅子に座るなり、いきなり言われた。
「あんなぁ、莉緒。…悪いけど、2人目は諦めてくれ。」
「は?何やのいきなり。この前のことやったら、そないに気にせんでも、疲れてんや…」
「違うっ!そうや無いんや…。」
悲鳴みたいな声に驚いた。
「たっくん!?」
こんな苦しそうな顔は、初めて見る。
一体、何があったと言うのか?
得体の知れん不安が、胸の中で膨れ上がった。
「あんな、こんなん、絶対おかしい、受け入れられへん、って莉緒は思うかも知らんけど、きいてくれ。…たぶんやけどな、オレ、ゲイやと思う。」
「…は?」
その瞬間、世界が止まった。
―勃たへん、やなくて。
―私じゃアカン、でもなくて?
―ゲイ!?
TVでしか観たことのない、ドギツイおねえの顔がいくつも、頭の中をグルグル廻った。
―キモチワルっ!!
「一体それ、何の冗談なん?悪趣味やで。」
こんな状況から1秒でも速く脱け出したくて。
精一杯、笑った顔を作って言った。
「こんなこと、おまえに冗談で言えると思うか…?」
「そやけど、たっくん。」
「嘘でも冗談でもない。マジな話や。いきなりやし、解って貰えるとは思わへん。とにかく、2人目はムリや。ソコだけ、まず分かって欲しい。」
深々と頭を下げられた。
「わかった。けど、大丈夫?」
「へっ?大丈夫って、何のことや?」
「いや。今のたっくん、メチャメチャ思い詰めた顔してるから…。」
「だいじょうぶ、やと思う。」
青ざめて、今にも泣き出しそうな、ちっとも大丈夫やない顔やった。
「…ホンマに?」
「ああ。それより、悠真は?」
「熱出して寝てるわ。」
「えっ!?」
「ただの風邪やから、心配ないわ。それより、あんたや。なんでそんな結論に…」
―まさかっ!!
バッと逸らされた顔が、全てを物語っている気がした。
「なんで!?なんでそんな…。」
全身が震えた。
「…わからへん。」
蚊の鳴くような声だった。
「そやけど、もう嘘はイヤや。」
―このバカぼんめっ!!
ムカムカした。業が沸くとはこのことか!!
「判ったわ。つまり、あんたは自分が、ラクになりたいだけや。私も悠真も放り出して逃げるつもりなんやろうけど、そうは問屋が卸さへんで!」
「違うで、莉緒。そうやない!」
「やかましわ!!相手がおるんやろ!?世間知らずなあんたを騙して、お金巻き上げた挙げ句、ゲイバーかどっかで働かせようって考えとるような、コスいオカマが!どこやソイツ!?今から行って、ひん曲がった性根直るまで、どついたる!!行くで、案内せえや!」
立ち上がった私を見て、夫はバタバタと手を振った。
「り、莉緒!?ち、ちょっと落ち着い…」
「これが落ち着いていられる思うんかっ?」
コンコンッ。
「あのー、和泉さん?どうかされましたか?」
ドア越しに掛けられた、ベテラン看護師の声に、ハッと我に返った。
―あ!!
ここ、病院やった!
恥ずかしさが、一気に込み上げてきた。
「か、帰るでっ!車、廻して来て。」
「ぉ、おう。わかった。」
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