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滴Ⅱ
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地下鉄に乗ってから、静からのメールを見返して、用心の為に消した。
―あと10分。
乗ってきた客が、濡れたビニール傘を持ってた。
―雨か。
静の居るホテルは駅からすぐやし、走れば済む。
―あ。
しもた!
今日の上着は、よりによって買うたばっかりのライダースジャケットで
濡れるんも、イヤやけど。
こんな御揃いみたいなん着て、静に会うとか…
考えてみたら。
―メチャメチャ恥ずかしいやんか!
今さらながら、自分の浮かれっぷりがイヤになって、俯いた。
―そうでも
早よ、静に逢いたい…。
そう思た瞬間から
まるでスイッチが入ったみたいに、ジリジリ体温が上がり始めた。
―落ち着け!
念じれば念じただけ
緊張?
それとも期待?
呼吸も浅く、短くなってゆく。
―ちょ!
マジであかん。
あとちょっとで、暴走してまいそうな自分をどないにかして鎮めようと、つり革に掴まって深呼吸しようとした時
背筋に、何となくヒヤッとするもんを感じた。
―なんや。この感じ…?
オレは別に、ニュータイプとかやないけど
なんでか、いきなり判った。
―莉緒が居るっ!?
次に着いた駅で降りる人の波に紛れて、目の前の階段を急いで上がった。
自販機の陰でちょっとの間隠れて、上着を脱いで
それでまた、そのまま別の階段から、発車間際の元の車両へと戻った。
どうやら、嫁は騙されてくれたらしい。
―ああ、危なかった。
ホッと胸を撫で下ろした途端、スマホが鳴り出した。
地下鉄が駅を離れて、トンネル部分に入ると、圏外になったんか、自然と鳴りやんだ。
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