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mission Ⅱ
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「百聞は一見にしかず、いうことか。」
苦い顔でひとりごちた和泉の肩を抱き寄せ、静はフッと笑みを溢した。
「明らかに敵意を抱く相手と話をするのは面倒だ。それに、声を聴くのさえ、お互い腹が立つだろう。そこで手っ取り早い方法を考え付いた。写真なら、1枚あればこと足りる。俺の顔は写らなくても、存在感は示せる。ついでに和泉の回復ぶりも見せてやれる。」
「手っ取り早い、ってなぁ…、早いにも程があるやろ。」
「どうにかして早く別れたい、手を貸してくれ。そう言ったのは、おまえだ。」
「確かに言うた。そやけど…。」
「説得力は充分な筈だ。」
「アホ!有りすぎで逆にコワイっちゅうねん。」
和泉は口ではそう言いつつも、内心では静の閃きに、いたく感心していた。
今までノンケだった男の嫁(更に言えば子持ちである)に、いくら本人がゲイだと言ったところで、一体どこまで本当なのかと疑われるのは、至極当然のことだ。
実際、莉緒の怒りをあおり、状況を悪化させたのは、自分の優柔不断さからくる中途半端な説明に他ならない。
鬱々として果てしなく暗い…自分を限界まで追い詰めた全てを、やり方はどうあれ、静はたった一枚の写真で、見事に吹き飛ばして見せた。
そして、そうさせたのは、紛れもなく自分だ。
―振り回されているんやない。
この渦の中心は、オレやったんや?
やっと自覚した。
戻れないことも、傷つけることも、知っていて尚止まらない…。
「コワイなぁ…。」
問うように上がった眉を見て、和泉はすぐさま言い足した。
「今までと生き方を変えるってことは、オレが思とったより、ずっと大変なんやな。」
「今更だろう。」
「まぁ、そうやな。」
「大変なのは俺も同じだ。特に俺には距離というハンデがある。だから、せめてもう少し早く相談しろ。飛んでくる身にもなれ。」
「うん…、わかった。」
いつになくしおらしい返事をした和泉は、そのままおずおずと静の首へ手を廻し、静かにこう告げた。
「静が来てくれて、助かった…ありがとう。」
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