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貌 side R
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仕事のトラブルで、帰宅直後に再出社した筈の夫からのメールを見た瞬間。
莉緒は、髪が逆立つのを感じた。
―きっと、殺人って、こういう瞬間に起こるんやろうな…。
頭の隅で、冷静なもう一人の自分が呟いた。
このままでは、何かが壊れてしまう。
―それでは悠真が守れない。
本能が、口を開かせた。
「私を何やと思てんねん!!神社の狛犬でも、漬物石でもあらへんのよ。そんなことも分からんのか、この盗人が!!」
[密会なう]
ふざけた文面よりも、莉緒にショックを与えたのは、夫の表情だった。
ひどく戸惑ったような、それでいてどこか甘えるような目線
完全に気を許していると言わんばかりのその顔
この数日、全く生気の感じられなかった頬に赤みがさし、虚ろだった瞳が、輝きを取り戻している…。
『誰がこうさせたか?
拓真が惚れてるのは、誰だ?』
この無言の問いは、夫の肩に置かれた手の持ち主からのもので間違いないだろう。
―あくまでも、私に顔を見せるつもりは、さらさらあらへんのやな。
そやけど、こうして挑発はシッカリしてくる。
卑怯者の名なしの権兵衛が!!
厚かましいて、トンデもなくタチの悪い、それに、厭になるほど頭が切れる…。
夫が着ているこのワイシャツも、自宅のクローゼットには無かったものだ。
パッと見でも上物だと判るそれをわざわざ着せた。
その意図は、独占欲?
それとも、この位の暮らしは、させてやれるという自信か?
自分がイメージしていたような遊び人ではない
独自のポリシーのある、インテリ層。
―イケメン、なんやっけ?
きっと、夫の親しみやすい嫌味の無い外見に違いない。
その内側に、邪な思いを抱いた曲者。
―コレは
よう考えな、アカンやつや。
相手が見るか、見ないかは判らない。
―そやけどな。
一応は、コッチからも何か反応したらんとなぁ。
和室に入って、箪笥の上のまんじゅう食いという人形を撮った。
「送信、と。」
子供の無い人やったら、この人形の意味も、知らんのやろうけどな。
あんな写真1枚で、私を揺さぶろうって、魂胆がな
浅はかもエエとこやわ。
どんだけ場数踏んでるんか知らんけど
あの人との付き合いは、私のが長いんやし
負ける気なんか、せえへんわ。
―女の意地を見せたる!
タマネギをひたすらみじん切りしながら、決意した莉緒なのだった。
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