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home Ⅱ
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「なぁ。今更やけど。たっくんとこも、何かあったん?」
和泉の家は、あの母親を中心とした結束の強い家族だとばかり思っていた。でも、それは違っていたのか。
「ウチは二世帯やったからな。嫁姑いうやつもあったし。親父はオレと違うて、あの顔やろ?けっこう遊んでたらしくてな、夜中に知らん女が訪ねて来たこともあった。」
サラッと言われた最後の一言に、背筋が凍った。
「それって、ガチの修羅場やないの。」
「でもな。オレには、何の説明も無かった。あの人は父方の親戚や、って一言で終いやった。」
そこで言葉を切ると、夫は立ち上がってキッチンへいった。
どうやら玄米茶を淹れたらしい。香ばしいかおりがしてきた。
「ケンカしたり、いがみ合う親を見てる内にな。好きな者同士で結婚したはずやのに、いつの間にか、あないになるんやなぁって。そやったら、ヒトの気持ちや言葉を、イチイチ真に受けるんはアホらしい。取り敢えず穏やかに過ごせたらええと思ってな、全部テキトーにやることにした。失恋した友達の涙を見ても、卒業式とかで頑張れよ!なんてアツく言われても、安っぽいドラマみたいやって、内心思てたんや。」
ボソボソと、無表情に話す夫。
人好きのするあの笑顔の裏には、こんな顔もあったのか…。
「ほな、なんで結婚なんかしたん?」
「なんでやろな。世間体とかもあったけど。莉緒とやったら、ずっと穏やかに暮らしていける気がしたんや。実際、思たより、うまくいってたし。これという不満もなかった。悠真の親にもなれたしな…。」
「だったら、なんで!?」
「…ホンマに、なんでやろなぁ。」
さも不思議そうに、呟いた。
「ワケが解らへんわ!」
「でも、これだけは判る。セイは、今まで逢った誰とも違う。諦めたら、一生後悔すると思うねん。」
「はあっ!?私には、離婚することの方が、よっぽど後悔すると思えるねんけど?」
「まぁ、そうやろな…。」
フッと笑った顔は、柔らかくほどけていた。
「これ飲んだら、荷物作るわ。」
「ふんっ!!勝手にすれば。」
まるで旅行にでも行くようなテンションで、夫はサッサと単身赴任の荷物を詰め始めた。
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